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| 1.最近の読書から得た不思議な経験 |
| 海外で生まれ育った外国人が日本の仏教思想の入り口に当たるであろう考え方を表 |
| す名句「一期一会」や「もののあはれ」を理解できることの裏には何があるのであろ |
| うか? |
| どちらかと言えば完璧主義を望む筆者の生き方を改める絶好の機会になるかもしれ |
| ないと思い買い求め読んだ英国のプレスマンの書かれた一冊の本がある。英国の“ガ |
| ーディアン紙”の元記者で、人生をテーマにした多くの著書を刊行されているオリバ |
| ー・バークマン(Oliver Burkeman)が2024年に著された“Meditaitions for Mortals ” |
| (邦訳「限りある人生を上手に過ごす方法 不完全主義」(高橋璃子訳 かんき出版 |
| 刊)である。この本は4週間の講義様式で綴られていて、その最後の週に当たる第4 |
| 週の「人生は今ここにある」の節の25日目の講義として「体験をため込んでも意味が |
| ない」の項の中に「(中略)時間の手の内に留めようとする努力と対照的なのが、日 |
| 本の茶道の精神だ。」として紹介し、以下の文章を続けている。 |
| 「茶道では移ろいゆく時のはかなさは体験の価値を損なうどころか、むしろ価値を |
| 生みだす源と考えられている。精緻で流れるような茶道の所作は、とどまることのな |
| い一度きりの時間に敬意を払い、その尊さを表現するものだ。19世紀の日本の政治家、 |
| 井伊直弼は次のように説明する。 |
| そもそも茶会は「一期一会」というもの。同じ人と幾度か同席することはあるにせ |
| よ、今日この日の出会いは二度と繰理返されることはない。ゆえに茶会は一世一度の |
| 会なのであり、心を尽くして臨まねばならない。 |
| そしてバークマンは続ける。 |
| 「茶会を1000回開くことはできる。毎回同じ人を招くことも可能だ。だとしても、 |
| その日の出会い、その日のお茶は、一度きりしかない。時は二度とは戻らない。もし |
| も超自然的な力によってその瞬間が永続し、いつでも好きな時に戻ってこられるとし |
| たら、その価値はすっかり損なわれてしまうだろう。 |
| 消えゆくはかなさこそが、今という時を特別なものにしているのだ。時にしがみつ |
| く手を緩めて、流れに身を任せてみると、さまざまなことがいつもより心地良く感じ |
| られる。楽しもうと頑張らなくてもいいし、「今この時に感謝しよう」と意識する必 |
| 要もない。体験から何かを得ようとしない方が、おのずから没頭できるし、その場に |
| いる人たちとも深くつながることができる。そうしたからといって、人生がつねにハ |
| ッピーになるわけではない。美しい時が生まれたそばから消えていくのは、どうした |
| って哀しいものだ。 |
| しかしその哀しさには、しみじみとした良さがある。日本の人が「もののあはれ」 |
| と言うように、移ろいゆくはかなさへの哀愁は、人生に彩りと深みを与えてくれる。 |
| それは時間にしがみつくのをやめたときに見えてくる景色だ。手放すことで、僕らは |
| 時に包み込まれ、時とひとつになる。 |
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| 2.筆者の選択の結果と得た二重の喜び |
| 筆者が不完全主義で満足できるかを試すために選んだ本書が、 そのエピローグの |
| 「不完全なままで歩きだす」に全く受け入れられる気持ちを感じて大成功だったと大 |
| 喜びしたくなった、 |
| 著者のバークマンは言います。「自らの限界を受け入れて死すべき運命に向き合い、 |
| 精神的な自由を手に入れることは4週間で達成できる人はまずいない。期待させたの |
| なら申し訳ない。自己啓発の書で何週間で何を達成するなどという売り文句は実現で |
| きぬものが殆どだが、不完全主義については、実現の見込みは一層低い。何故ならそ |
| れは終わりのない旅だからだ。しがみつく力を少しずつ緩めて、終わりのない現実の |
| 流れに身を任せることを学んだ方がいい」と薦めている。 |
| 「不完全な私たちは、まっさらなスタート地点など存在しない。いつだってあなた |
| はすでにここにいて、積み重ねた過去の影響を受けている。特有の性格があり、強み |
| と弱みの両方を持っている。意志の力ですべてを振り払おうとしても、現実はそう簡 |
| 単には変わらない。むしろ開き直って自分は今ここにいて、こういう人間である事実 |
| を認めてしまった方が、これから大きく変化できる可能性がある。」と教えてもらっ |
| た。 |
| 「自分は何時か死ぬという現実。人生は瞬間の連続であり、ひとつの瞬間の過ごし |
| 方は他の無数の選択肢から選び取ったものであるという現実。選ばなかった道はどん |
| なに惜しくても捨てるしかない。心が傷つかない日は訪れないし、物事は何時だって |
| 思い通りには進まない。現実は確かにつらいが悲しみや孤独に沈み、混乱や絶望に襲 |
| われることもあるだろうが・・・。だとしても。「こんなはずじゃない。」「もっと |
| 別の人生をいきなければ・・・」という葛藤は以前よりは軽くなっている筈だ。不可 |
| 能なことをやろうと無理に抗わなくともいいのだから。背負いきれない荷は下してし |
| まおう。そして歩き出そう。今までよりも逞しく、穏やかに、他者に心を開いて。き |
| りっと澄んだ現実の空気を、胸いっぱいに味わいながら。」 |
| 非常に力強い締め括りの言葉に励まされ、久しぶりの読後感のすがすがしさを味わ |
| った。著者の説く内容とこの本を選択した筆者の大当たりに感謝の気持ちと満足感で |
| いっぱいでした。 |
| 了 |
| 2026年5月22日(金〉記 |