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2.果たして欧米の資本主義はどうなっているか? |
筆者の見るところでは、既に小規模ながら米、英、仏国にはこの傾向が現れている |
と思われる。例外は唯一イタリアであろうか。何故かなれば、イタリアは多分に国民 |
性によるのであろうが、イタリア国民には各自の労働時間(就労時間)を完全に雇用 |
契約によって商品として売り渡しているとは解釈できず(と言うか、しかたくなくて)、 |
売り渡した就労時間も個人の選択で、個人の方が雇用主よりも強くあるいは同等にそ |
の身の振り方、使い方を決めることができると解釈している向きが多く、仕事を自分 |
の好きに筋立てをして、自分の感情を移入して処理し、遂行したい気持ちが強く、自 |
分が関与できない単なる雇用契約には実が入らないのかも知れない。会社の規模が大 |
きくなればなるほど、この契約関係は希薄になり、義務意識が薄れて行くのだろう。 |
典型的な例は、国家公務員を見れば一段と明らかになるだろう。彼らは少しも真面目 |
に職務を果たしているとは思えず、空きがあれば自分の思いを遂げるために、いろい |
ろ手を出したいと常に思い猛っていることが偲ばれる。これは旅慣れていると自負す |
る筆者の思い過ごしでないことを願うのみなのだが・・・・。 |
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3.問題は日本の現状をどう解釈すればよいのだろうか? |
筆者は日本も欧米に似たり寄ったりと見ていたが、インフレ率2%実現を目指すた |
めと称して低金利を続けて以来、状況は大分変ってきて、日本の方が他の欧米の先進 |
国よりも厳しい状況に追い込まれているように感じられる。低金利から円安を招き、 |
原材料の輸入コストが上がり、工場の生産効率も低くなり、物価の上昇が著しく、低 |
賃金、少子化の結果、雇用も難しくなり、低開発国から日本に憧れて出稼ぎ労働者が |
いっぱいだった一時期とは全く様変わりしてしまい、ニッポンの国全体として世界の |
相対的なランクはいろいろな面でも低下の一途を辿っているようにさえ見える。今後 |
はどういう方向に進んでゆくのかを判断する材料が未だ吟味出来ないと、筆者も内心 |
頭痛の種と感じている。加えて岸田内閣になって、“新しい資本主義”などというス |
ローガンが唱えられるに及んで、完全にギヴ・アップ状態となってしまった。ここで |
参考までに、岸田内閣の説く新しい資本主義とは一体どういうものなのか、何処が今 |
までと違うのか、岸田首相の言いたい力点は何処にあるのかについて纏めてみたいと |
思う。 |
<新しい資本主義> |
新自由主義から経済政策を改めて、「成長と分配の好循環」を実現することを狙って |
いる。お題目は素晴らしいの一語に尽きるが、美辞麗句は並んでいるものの、具体策 |
には欠ける気がして、決して頼れる太い大きな柱とは筆者には思えない。岸田首相の |
提唱する四つの柱の要点を列記すれば以下のようになろうか。 |
(1)人への投資 |
(2)科学分野への重点投資 |
(3)スタートアップの起業加速 |
(4)グリーントランスフォーメーション(GX)への投資 |
お気付きの通り、従来からの課題の解決と新たなマーケットの創出による成長の二兎 |
(にと)を追うことの二つを同時に狙っている。その後細目で追加説明のあった部分 |
を補うなら、 |
(1)人への投資では、 |
主に本年度末に「資産所得倍増プラン」と称してNISAやイデコ(iDeCo)を拡 |
充する。 |
*筆者注:イデコ(iDeCo)とは個人型確定拠出年金を言う。令和6年度からスタ |
ートさせる。初心者でも迷わず始められると宣伝され、運営手数料0円、所得 |
税・住民税が軽減され、運用益は非課税、100万円を5年で135万円に増やせる |
資産運用で、利回り7.0%。目下のところ、どこのiDeCo取り扱い証券会社・銀 |
行でも初期費用は2,829円、口座管理手数料も同じ171円と謳われている。 |
他に1)非正規労働者を含む100万人に再就職支援と能力開発を行う。 |
2)男女賃金差の好評を義務化する。 |
3)非財務情報の開示を強化する。 |
(2)科学分野への重点投資では |
主に量子、AI、バイオで国家戦略を構築する。 |
(3)新興企業では |
主に創業時に信用保証を得ていれば、個人保証は不要とする。 |
他に1)スタートアップ支援へ5ヶ年計画を策定する。 |
2)公益重視の新たな法人形態を検討する。 |
(4)脱炭素では |
主に10年で官民150兆円の投資を実現する。 |
更に、新たな国債発行を考慮する。 |
他に1)再エネや原子力を最大限に活用する。 |
(5)安全保障では |
主に防衛力を抜本強化し、装備品の輸出制限を見直す。 |
(6)財政では |
補足的に従来の健全化目標の「堅持」を「取り組む」に後退させる。 |
過去の政権の主な経済政策を振り返ってみると、どの政権も経済の看板政策を意識 |
的に行っている。 |
(1)小泉政権では「職域なき構造改革」を掲げて、郵政民営化などを実現した。 |
(2)安倍政権では金融、財政、成長戦略の「3本の矢」による「アベノミクス」 |
を提唱したが、完全実施には至らなかった。 |
(3)菅政権では2050年に温暖化ガスを実質ゼロにする脱炭素やデジタル庁創設な |
どを表明したのが新しい。 |
岸田政権の経済政策をこれら過去の3政権のものと並べて比較するなら、 |
*成長へ投資を促す改革即ち「新しい資本主義」案を掲げ、人と技術に重点を置 |
き、投資を促す。 |
*同じく成長分野に人材100万人をシフトし、「新しい資本主義」の原案の柱とし |
た。 |
問題は愚策とまで言われる美辞麗句に飾られたこれらの「新しい資本主義」の誘惑 |
を断つことができるかではなかろうか。 |
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4.おわりに |
英国のサッチャー首相(当時)、米国のリーガン大統領(当時)のリーガノミクス、 |
わが国では小泉首相(当時)の上記の構造改革などで一時期世界的な大きなうねりの |
ように見えた新自由主義による政治・経済の流れは影を潜め、世界は今や経済活動に |
よる弊害を是正しながら成長を求める政策に中心を移そうとしている。 |
米国バイデン大統領の唱える経済政策「ビルド・バック・ベター(Build Back Better |
略称 B.B.B. より良き再建)」もその代表的なものである。 |
*筆者注:B.B.B.(より良き再建)は以下の3政策で構成されている。 |
(1)社会的なセイフティーネットの強化 |
(2)気候変動対策 |
(3)富裕者、企業への増税 |
これ等の政策はルーズベルト大統領の「ニューディール政策」、ジョンソン大統 |
領の「偉大な社会計画」に匹敵する画期的な内容を持っていると評価されている |
そうである。岸田首相の「新しい資本主義」を構成する政策の幾つかがB.B.B.に |
似ているので、肖ってよい評価を得られることを狙っていると揶揄する心無い人 |
々もいるんだとか。 |
ということで、少なくとももう1〜2年経てみないと比較も評価も材料不足で出来 |
ないように思うので、この辺りでペンを擱きたいと思う。見掛け倒しの主題に、尻切 |
れトンボの結論なしで誠に格好がつかないがお許しくだされたく。 |
了 |
2023年9月29日(金) 記 |
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1.はじめに |
今回首題に使わせいただいた「山の本棚」は、筆者の敬愛し、尊敬して止まないド |
イツ文学者で、熟練のエッセイスト池内 紀(おさむ)さんが山と渓谷社から出版さ |
れている山と自然のガイドブックである月刊誌“山と渓谷”に2007年1月号から2019 |
年10月号まで12年間にわたって掲載された山に関する幅広い範囲の書籍に付いての書 |
評エッセイ全153回分を一冊に纏められて、今年の7月に同社より上梓された単行本の |
タイトルである。筆者も雑誌”山と渓谷”は時々特集の魅力に誘われて購入して読ん |
でいたが、池内さんのエッセイで取り上げている本は殆ど山のガイドではなく、人生 |
に関わるあらゆる分野、哲学から民話、自然科学から人文科学に及ぶ真に広範囲に現 |
在までに世界中で出版された名著を取り上げて紹介されているもので、全世界の著名 |
人の著わした名作、名文を知る上でまたとない良書であると思い、今回触れてみたい |
と思った次第である。 |
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12) チャールズ・ダーウイン著、八杉龍一訳 「種の起源」 (1990年) |
「それはともかくとして「「種の起源」」を思うとき、奇妙な一致に気がつくだ |
ろう。それが発表された十九世紀後半は産業革命のまっ只中であって、旧来の貴 |
族や地主層が没落し、続々と新しい階層が誕生していた。家門や土地所有ではな |
く、才覚と努力でのし上がってきた新興のブルジョワである。自由な生存競争の |
もとでは、より強いものが生きのびる。 ダーウイン説はまた、台頭してきた市 |
民層の「「種の起源」」をも語っていた。さらにダーウインの祖父は博物学者と |
して知られており、独特の進化思想の持ち主だった。となると後天的な特質の遺 |
伝を説いたダーウインにも、遺伝の法則がはたらいていたことになる。自分を代 |
弁した学説といえなくもないのである。」 |
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16) 宮本常一著 「山に生きる人びと」 (1968年) |
「山中にあって文明におくれていたのではなく、暮らしの基盤そのものが大きく |
ちがっていたことを、宮本常一はくり返し述べている。戦前の調査によれば焼畑 |
のおこなわれていた土地は全国に分布して、驚くほど広かった。人が思う以上に |
多くの「「山岳民」」がいたからではなかろうか。中世にあって、山を舞台に活 |
発な活動を示した記録もあり、それが近世に入り徹底した討伐を受けた。隼人の |
ような戦闘的で勇敢な武士団が多く山間や山麓台地に発している事実を、どう考 |
えていいのだろう。ごく抑制した書き方ながら、ゆたかな体験にもとづく推論が |
刺激的なのだ。ヒタヒタと峰をわたる山の人の足音が聞こえてくる。」 |
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17) 牧野富太郎著 「植物一日一題」 (1953年) |
「何よりも「「一日一題」」のたのしさが、智恵と若さを示している。愚かな戦 |
争によって一面のガレキと化したが、春が来ると樹木は眼を出し、草花は旺盛に |
繁り、秋になるとタネをつける。インゲンマメ、ヒマワリ、グミ、サネカズラ、 |
ゴンズイ・・・。ときには学術的な述べ方をしても、野にある生き物たちへの深 |
い愛情と敬慕が手にとるようによくわかる。一日一つの宿題を自分に課したのは、 |
荒廃した国土への再生の祈りでもあった。写生の美しさと独特のユーモアが、こ |
の明治人間のたくましさを伝えている。植物は誠実にして公正であって、精虫発 |
見の材料になったイチョウの大木は、その後も小石川植物園でティティと枝をの |
ばし、「「策動者」」の手でとばされた人に、十数年後、学界最高の栄誉をもた |
らした。 |
それというとき、小躍りするようにして、「「宜(む)べなる哉(かな)」」と |
添えるところがほほえましい。」 |
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3.おわりに |
偶然にも本書が池内さんの絶筆の書となったそうである。 |
因みに池内さんは2019年8月に身罷(みまか)られた。「山の本棚」を毎日数頁ずつ |
読み進めていると、人間の生活が何と深くも浅くも山や森、林、木々、緑の自然、自 |
然の中にある湖沼、またその中に生育する動植物と係わっているかを改めて思い知ら |
された。いかに文明が栄えても、自然の全くない無味乾燥な周囲の中では、人間は生 |
活することができないであろうことは容易に理解できる。自然を荒らしては勿論いけ |
ないが、手入れというか保護は絶対に必要である。自然が好きなら、人並み以上に関 |
心を持って、保護に当たることが要求されよう。積極的に自然と共生する心得をしっ |
かり抱き、美しい地球が、日本が、わが故郷がこの先継続して繁栄できるよう、特に |
日本の持つ世界自然遺産や日本国土にしか生息、或いは生育していない動植物の固有 |
種を絶やすことの無きよう守り抜かねばならであろう。本書を読み終えて改めてその |
覚悟を教えられた。 |
了 |
2023年9月24日(日) 秋の彼岸の最中に記す |
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1. はじめにー深田久弥の「日本百名山」について |
作家深田久弥が「日本百名山」として纏めた一冊の本にして新潮社から出版したの |
は、連載された雑誌「山と高原」での連載完結の翌年の1964(昭和39)年であるが、 |
遅れて朝日新聞社からも刊行された。 深田は戦前から百名山の構想を抱いており、 |
1940(昭和15)年当時の雑誌「山小屋」に「日本百名山」のタイトルの下に、20の山 |
を10回連載した。この連載は中断したままで終わっているが、戦後当時の雑誌「山と |
高原」がこの連載を引継ぎ、1963(昭和38)年に完結するまで23年を要している。深 |
田は単なる山の案内書ではなく、文学者として当時籍を置いていた東京帝国大学文学 |
部を中退してまで、百名山の完結に賭けていた。深田は自ら決めた対象の山を選ぶ三 |
つの基準を厳格に守った。先ず第一に山の「品格」、第二に山の「歴史」、三つ目に |
芸術作品にも似た、「個性」があることを求めた。そして一つの追加条件として、高 |
さを1500メートル以上の山に限るとした。ただ、二山をその基準の例外とした。一つ |
は北関東の筑波山(876m)と、もう一つは南九州の開聞岳(924m)である。このよ |
うにして刊行された「日本百名山」は、従って最初は山岳関係者よりも文学関係者に |
よる評価が圧倒的で、小説家林房雄が「これぞ不朽の文学」と絶賛したほか読売文学 |
賞を受賞するなどしている。 |
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3. 「日本百名山」の英訳本“ONE HUNDRED MOUNTAINS OF JAPAN” |
が出版された経緯 |
翻訳したのは英国人マーティン・フッド(Martin Hood)という人で、1990年代を |
日本で働いていて、100名山の3分の1を自分でも登っているという登山の猛者であ |
る。因みに同氏が日本で初めて登った高山は加賀の白山であった。それは、百名山の |
著者深田久弥の生まれ育った地の名山であったから、そこをスタート地に選んだのだ |
そうである。現在はスイスを活動の舞台として、国際的な機関である国際決済銀行で |
働いている由で、チューリッヒのアルパインクラブのメンバーでもあるそうです。ご |
夫人の山田晴美さんは当時福井県の大学で英語を教えておられ、訳者のフッドさんと |
は言葉を通しての友人であった。あるときフッドさんから「百名山」の翻訳原稿を送 |
られ、その詩的な美しさに魅せられ、交際が進み、2014(平成16)年5月に結婚にゴ |
ールインされた。深田が引用した日本の古典の文章については山田さんの助力を得て |
深田の文章をしっかり一晩2頁ずつ英訳し続け、英訳本を出版しようと決意し、深田 |
の長男森太郎さんの了解も取り、日本国内外の出版社に持ち掛けたがすべて断られた |
が、偶々米国の研究者から日本関係の学術書を多く扱っていたハワイ大学の出版局を |
紹介され、同出版局から刊行される運びとなった。初版本はB5版のソフトカバーの文 |
芸書で、表紙には湖に映る山の写真が使われているが、直ぐに完売となり、増刷はハ |
ードカバーで、表紙には大文字で“ONE HUNDRED MOUNTAINS OF JAPAN”と5段に印刷 |
されているだけである。筆者が座右の書としているのもこのハードカバー本である。 |
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1.はじめに |
これまでに中国の成語や四字熟語と日本の四字熟語との関係に興味が湧いて書き綴 |
ってきましたが、先ごろの中国の全人代大会で習近平が従来の慣行を破って、国家主 |
席の職の任期満了の枠を外して、無期限に続行できることが満場一致で決定されまし |
た。前後して、それまで習近平が推し進めてきたコロナゼロ政策を急転して新型コロ |
ナの患者を顕在化させると同時に、現在の中国で最も深刻な問題の一つの失業問題が |
明かにされた。特に若者の失業は深刻で、4人に1人が失業している状況に陥ってい |
ることが顕在化した。 (注:中国国家統計局が2023年5月16日に発表した4月の |
16〜24歳の失業率は20.4%となっています。) |
そこで、以前習近平が国家主席の座に着いて直ぐに施行された「一帯一路」広域経 |
済圏構想と今回の永久国家主席について同時に顕在化された「同工同酬」と「以工代 |
賑」の二つの政策について、内容を概説しながら、未だほとんどの四字熟語辞典にも |
載せられていないこれら三つの四字熟語について以下補足して見たいと思います。 |
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2.「一帯一路」、「以工代賑」と「同工同酬」とは |
(1)「一帯一路」 |
中国の広域経済圏構想で、(1)「シルクロード経済ベルト」と(2)「21世紀 |
海上シルクロード」から構成され、(1)は中国の西安市からトルコ、ロシアを経 |
由して、(2)は中国の南東部からマレーシア、ケニアを経由して二つとも最終的 |
にはイタリアに繋がるものであります。 |
約2000年前、ユーラシア大陸の人々は「シルクロード」と呼ばれるアジア、欧州、 |
アフリカの各地の大文明を結ぶ貿易と人文交流の道を切り開きました。現在もこの |
シルクロード精神は代々受け継がれ、21世紀を迎えシルクロードの現代版として |
2013年、習国家主席により「一帯一路構想」が生まれたのです。アジアと欧州を陸 |
路と海上航路による物流ルートを作り、貿易を活性化させ、経済成長を促そうとい |
うものでした。 |
具体的な目に見えるプロジェクトとしては、 |
欧州国際貿易列車 「中欧班列」(China Railway Express)と中国パキスタン経済 |
回廊があります。 |
そもそも一帯一路が出来た背景には、高度経済成長の終焉があり、過度な輸出依存 |
政策の限界があり、国内の過剰生産の緩和策として考えられたものでした。 |
現在でも、一帯一路の問題点としては、以下の4つが挙げられるでしょう。 |
i) 地元との不和が絶えない |
ii) 大量の資本投下による汚職の根源になっている |
iii) 投下資本の返済不能のケースが累積してきている |
iv) 自由に開かれた太平洋が中国の領域化され始めている |
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2.「それ」、「あれ」、「これ」と「あの」、「その」、「この」で |
代弁させようとする事柄が多 方面にわたる老人の会話 |
筆者も日頃頻繁に反省していることなのですが、物事を説明するのが下手になりま |
したね。ある事柄を取り上げても直ぐに名前も言わず、限定した説明もせずに、相手 |
が理解していると思い込んで「それ」、「あれ」、「これ」と置き換えて話しを進め、 |
聞いている方も「あの」、「その」、「この」で受けて、話しを繋げていくのですが、 |
不明瞭な誤解がまぜこぜになって一緒に伝わってしまい、理解が一層不透明になって |
いくのです。和気藹々のムードは結構なことですが、眉を顰(ひそ)めたくなるよう |
な噂話や悪口が躊躇(ためらい)もなく次々と話題に載せられているのを傍で聞いて |
いると、情けなくなるやら、少なくとも怨嗟(えんさ)の声だけは拾いたくないもの |
だと思ってしまうのです。 |
一つには、 |
老化して歳を重ねて行くと、必然的に会話に使われるワードの数が少なくなり、限定 |
され、使い易い代名詞の「あれ」、「これ」、それ」や「あの」、「その」、「この」 |
が代わりに使われることがメチャ多くなることはあるでしょう。 |
二つ目には、 |
難しい単語を避けて使わなくなるから勢い代名詞を代わりに使うことになってしまう |
のでしょう。しかし、難しいかもしれませんが、話題もまたその筋道、ストーリーも |
簡略化されて、ピントがボケてくることも歪(ゆが)めません。 |
筆者は更に三つ目にもう一つ、歳と共に使われる語彙の減ってくることを指摘して |
おきたいと思います。書き言葉を並べているときにはさほど感じませんが、話してい |
る言葉はかなり幼児語に近づいているとさえ感じられる程です。 |
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これら3項目の新しい試みの他に、既に1998年に自分で起こし、23年間運営してき |
た自動車関係の事業を2021年3月に閉鎖する際に、特に注意して言語能力維持のため |
に、エッセイをもっとこまめに書き続けることと高校・大学時代に一時期夢中になっ |
ていた俳句と短歌に再没入して現在に至っていることも付記しておきましょう。 |
勿論自分の身体が自由に動けるなら旅行や山歩きも続けたいところでしたが、生憎 |
の心臓病(労作性狭心症と心房細動)と眼病(網膜静脈閉鎖症)が見つかって治療を |
重ねるにつれ、在来の頸椎と腰椎のヘルニアに膝関節症が重なって、動きが自由にな |
らず、残念ながら脳の劣化を防ぐことが精一杯の目下できる老化対策の方法となって |
しまいました。何とも寂しい思いを禁じ得ないここ数年です。 |
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4.おわりに |
例えとしてはあまり適切ではないかもしれませんが、モノによっては答えは一つし |
かないとは限らないのです。チャールス・ダーウィンがあの進化論の中で述べていま |
す。「マレーシアのあるアゲハ蝶は雄(♂)は尾翼のない黒色の丸翅の個体が一種類 |
だけなのに反し、雌(♀)は黒い丸翅のもの、後翅に白い斑点の入ったものに尾翼付 |
きで白い斑点の入ったものの3種類の個体があることを写真入りで説明しています。 |
偶々筆者が若年の頃から蝶他の昆虫に魅せられて、つい最近まで特に蝶と蛾との付き |
合いが続いていた関係とダーウィンの進化論の英文の原書が捨てられず、今でも座右 |
の銘として時々目を通して楽しんでいるため、例にまでしてしまいましたが、言いた |
かったことは、何でも解答は一つと思うのは間違いで、自然界でも眼を間違わせてで |
も生き残れる可能性を、子孫を残せる方法を必死で追求しようとする姿勢が大事なの |
であって、 「ああそうなんですか、分かりました。そんなら早速そうします」は潔 |
(いさぎよ)いかもしれませんが、中でも年老いた人にはお勧めできないと言いたか |
ったのです。突っ込みにも退却にも今一度疑問を持ち、頭を捻ってみてから決断する |
ことを改めてお薦めしたいと思うからです。また、相変わらずの年寄りの足?(あが) |
きをやってるわいと笑って下さい。 |
了 |
2023年8月29日(火) 記 |
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2.「陳勝呉広」或いは略して「陳呉」は何? |
筆者には全くこの陳勝呉広についての知識がなかったので、先ずは辞書に頼ろうと |
したところ、手元のハンディなもの、普通の漢和辞典では見当たらず、筆者が座右に |
持っている大形の本格的な大修館書店の鎌田 正、米山寅太郎編集の「大漢語林」に |
「陳勝呉広」を見付けたが、「陳呉」を見よとしてあった。三省堂の松村 明編集の |
「大辞林」の「陳勝」について以下の説明書きがあった。 |
“ちんしょう 陳勝” |
中国秦末の農民反乱の指導者。 前209年、呉広とともに反乱を起こし6ヶ月で敗死 |
したが、各地で反乱を呼び起こし秦滅亡のきっかけとなった。 |
“陳勝呉広”(ともに最初に秦に背いて挙兵し、秦を滅ぼすきっかけをつくったこと |
から)物事のさきがけをすること、まっさきに行動を起こすこと。また、その人。略 |
して「陳呉」も使われる。読みは“ちんしょうごこう”、略した方は“ちんご”であ |
る。陳勝・呉広の乱という中国古代の秦帝国を滅亡させるきっかけとなった農民反乱 |
に由来する。紀元前210年に始皇帝が亡くなった後、前209年に陳勝と呉広という二人 |
の兵士が秦帝国に叛旗を翻したことをきっかけとして起こった農民反乱で、やがて秦 |
は前206年に滅亡してしまう。 そうした故事から、物事の先駆けをすることや、その |
人即ち首謀者のことを表す言葉として陳勝呉広という言葉が使われるようになった。 |
字引には「陳呉」と略して載せていることも多いとされる。 |
新しいことが良く分かった。偶然再読を思い立ったために、新しい言葉をまた一つ |
仕入れることができた。年老いても好奇心だけは続けて持ち合わせていたいものとつ |
くづく有難く思った次第である。 |
それにしても、柳田國雄はなぜこの遠野物語の中でこの「陳勝呉広」を使うことを |
思い付いたのであろうか。 |
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3.おわりに |
柳田國雄はこの遠野物語で幾つもの箇所で、地名に関連してアイヌ語について教え |
てくれています。幾つかを紹介してみよう。 |
「ヤチ」、「ヤツ」、「ヤト」、「ヤ」が語尾に付く言葉は、湿地のことを表し、 |
「トー」は湖を表しています。そう言えば、北海道に紅葉の名所として紹介され、筆 |
者も水彩画で描き、そして写真にもしたオンネトーという湖が思い浮かびます。 |
「ナイ」が付く地名も沢山ありますよね。これは沢や谷を表しており、「ライ」は死 |
を意味しているようです。 |
もう一つ「経立」と書いて「フツタチ」と読みますが、大きな大人を言う言葉だそ |
うで、人間だけでなく、サルや獣にも用いるものらしく、遠野物語にも何か所かで紹 |
介されています。 |
今更くだらない暇つぶしではないかと思われるかもしれませんが、筆者にはこうい |
うことが無償に引っ掛かって先に進めなくなってしまうのです。生まれついた貧乏性 |
かもしれません。今回はこの辺で引っ込めましょう。 |
了 |
2023年8月23日(水) 歯医者に月例診療に行く前に記す |
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4.期待される生成AI導入後の成果と教養としての |
AIの習得の必修化に絡む問題点 |
日本政府のAI戦略では2025年までに全ての高校、大学、短大および専門学校の全学 |
部全学科の学生に対して、AIに関する知識と技能の習得の必修化を謳っている。これ |
は先進国の中でも野心的な取り組みとして話題を集めているが、誰がどのような目標 |
と手段で実行され、予定した成果を挙げられるでしょうか。一般の社会人にも同様の |
教育的アプローチが要求されるでしょうし、予定通りのスケジュールが短期間のうち |
に組めるでしょうか。一般企業でも各教育機関でも平凡な共通したAIなど意義を持た |
ないでしょうし、それぞれのユニーク性を加味し、差別化できる製品やシステムを得 |
るためにそれぞれの事業体や教育機関で自らカスタマイズしたAIこそが生成AIになる |
のでしょうから、AIに対する習熟度を認知し、公示する尺度や監査にも似た機関や組 |
織の確立も求められるでしょう。特に、医学や生命科学の分野での活用が将来の生成 |
AIの大きな役割を担うことになるでしょうし、人間のDNA情報を包む大量の遺伝子 |
データの解析は本当に順調に発展できるなら考えただけでも身震いするくらい躍進的 |
場面を提供することになるのでしょう。 |
某企業では「グランド・チャレンジ」として早くも、現に実在している同じノーベ |
ル賞委員会からノーベル賞を受賞する生成AIを作ることを実際に開発計画に組み入れ |
ていることを発表しているという。 |
また、数年以内にインターネットには人間が書いたものよりも遥かに多くの生成AI |
が作成した文章や作図、画像、動画が見られるようになることでしょう。 |
さらに、YouTubeにはAI作の動画が蔓延(はびこ)り、AIが作曲した曲が街頭でも、乗 |
り物の車中でも、劇場や家庭のテレビからも流れてくることが当たり前のことになっ |
てしまうのでしょう。 |
これまでは人間にしか作れないいわゆる創作品とされた小説や物語、絵画、音楽、 |
劇場の役者の踊り手さえもAIが取って代わるものが多くなり、人間の持ち味の分野が |
狭まり、あるいは大きく侵されることになってしまうのではないでしょうか。ひょっ |
とすると今迄の人間の職業の大きなメンタルな部分が無くなってしまうのではないで |
しょうか。今まで知識が旺盛なことを売り物にしていた人間の大きな部分が無価値に |
なり、いわゆる「物知り」とか「生き字引」とか言われて重宝された人たちの地位は |
失墜し、誰も相手をしてくれなくなり、有名大学に進むために競ってモデルスクール |
に入る必要もなければ、博士や人間国宝や文化勲章受章者などの存在意義も無くなっ |
てしまうのかもしれません。そのくらい大きな時代を画する文化革命が起こることに |
なるのではないでしょうか。 |
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1.はじめに |
「成語」は“せいご”と発音しますが、中国で生み出され、昔から使われている決 |
まった言い方の言葉であり、通常四字から成っている。成語は数え切れないくらいた |
くさんあり、よく使われるもので、5,6千語、全体総数では多分2万語を越すだろ |
うと言われる。よく使われるものは四字そのままの形で日本語の四字熟語として転用 |
されている。しかし、現在では中国には語源や典拠がなく、全くの日本生まれで、既 |
に慣用句として使われているものや、逆に中国に移入されて使われている四字熟語も |
少なくなく、中には上の二字と下の二字が入れ代わって使われる中国の四字熟語も幾 |
つも生まれている。 |
言葉を日頃から気に掛けていると、自然とこれ等の違いに気づき、言葉の不思議を |
しみじみ感じる今日この頃である。この現象も筆者本人が人間を長くやっている結果 |
生まれたことなのだろう。全く老化しないうちに是非とも一文に纏めておきたいと思 |
い、本稿を認めた。 |
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2.中国に成語として生まれ、日本の四字熟語としてもおなじように |
使われている言葉 |
中国で生まれた成語は原則として、全てに典拠があり、言葉によってはその使い方 |
まで決まりがあるようである。この点が日本で誕生した四字熟語とは大きな違いがあ |
り、中国生まれでも日本で使われる場合には少々意味が違っているものもあるので使 |
用範囲については、若干注意を要するところかもしれない。 |
代表的なものを30例に絞り、以下に並べてみよう。 |
「千差万別」「富国強兵」「一気呵成」「大器晩成」「厚顔無恥」「虎視眈眈」 |
「臥薪嘗胆」「一挙両得」「一刀両断」「一触即発」「馬耳東風」「四面楚歌」 |
「空前絶後」「千変万化」「内憂外患」「電光石火」「一網打尽」「臥竜点睛」 |
「自暴自棄」「旁若無人」「単刀直入」「泰然自若」「論功行賞」「起死回生」 |
「有名無実」「弱肉強食」「徹頭徹尾」「竜頭蛇尾」「独断専行」「隔靴掻痒」 |
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1.はじめに |
2019年以降コロナ禍を通して日本中が大混乱に陥ったが、個々の家庭の中でも、夫 |
婦が最悪の場合には24時間家に閉じ込められ、どこへも出掛けられなくなり、特に夫 |
婦が思いがけなくお互いに伴侶がイラつく存在であることに改めて思い知らされ、そ |
の対応に苦慮したことが徐々に顕在化し始めた。我が家でも同じようなケースの夫婦 |
間の諍いが見られたが、筆者は始めは我が家に固有の事情かと考えていた。 しかし、 |
いろいろ幅広く外部から情報が入るにつれ、殆どの家庭に見られる共通の現象であり、 |
悩みであることが分かり、解決に時間を要する難題を抱えることになってしまったこ |
とを知った。朝から晩までずっと鼻突き合わせて同じ屋根の下に生活することは大袈 |
裟になるが、人類史上でも珍しい一時的な現象なのではあるまいか、在宅が逆に夫婦 |
の心を隔てる大きな壁として立ち塞がることになってしまった、と言っても過言では |
なさそうである。 |
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2.筆者の経験した女房とのイライラの実例と、外部情報を得たときの合点と喜び |
夫婦のそれぞれの“イライラ”は違うもので、男と女の脳の機能の違いと、その反 |
応の違いによるものであることが新たに分かり、今まで全く気付かずにいたことの中 |
にも、大きな問題、考えてもみなかった難題が横たわっていることを思い知らされ、 |
生き抜くことはそれなりに“大変な試行錯誤の連続なのだ”と改めて再確認したこと |
だった。 |
実際にあった話とは次のようなことである。どうか具体的な場面を想像してみてく |
ださい。 |
筆者が毎日のように自分で前日就寝前か、当日の朝一番に決めた一日の計画の内、 |
書き上げる予定のエッセイのタイトルと粗筋と脱稿の時間的スケジュールにその日に |
読む予定の本、併読する4〜5冊の読書進捗予定頁に従って朝食後から机に向かって |
いたとき、女房が冷房が十分に行き渡らないので、寝室に一台新しく冷房を入れると |
して、その工事人が来たことを少し離れたところから続けさまに話し掛けてきたので |
すが、筆者の耳にはギリギリモグモグ細かく響いているだけで、あまり気にも留めら |
れないものでした。暫くして無反応なのに癇癪を起して、女房は私の部屋の入り口の |
ドアを開け、喚き出した。筆者は何のことやら訳分からずに取り合わず、自分の作業 |
を続けてしまった。 このことを業者が引き揚げて行ってから、徐に筆者をにじる詰 |
(ニジ)りはじめ、その日一日の恰好の議論の種を女房に与えることになってしまっ |
た。お陰で筆者は一日中総攻撃を受けてしまったのだった。 |
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3.偶然に読み始めた本に救われる思いの回答を得た |
何日かを経て、全くの偶然なのであるが、脳科学コメンテイターの資格を持つ感性 |
アナリスト兼随筆家の手になる、つい最近の本年8月6日に幻冬舎から初版として出 |
版されたばかりの本を読む機会があり、その本の中に、「実は、男女は、四六時中一 |
緒に過ごすのには向いていない“脳の組み合わせ”になっているので、夫が四六時中 |
家に居るのでは、お互いにイライラする場面が増えるのは当然です。」、と書かれて |
いたのです。さらに、「そもそも一般的な男性脳は“いきなり話しかけられても、音 |
声認識はできない、特に、女性の声が「ことば」には聞こえない”、“結論の分らな |
い話しが2分以上話し掛け続けられても、音声認識機能は逆に停止してしまう”とい |
うことを認識していただかないといけません」と明記されていたのです。さらに進め |
て、「つまりは話が聞こえているのに、敢えて無視しているのではなく、女性には想 |
像もつかないでしょうけれども、男性の脳は勝手に“おしゃべり機能”を停止してし |
まっているのです。」と結論されていました。人生80年以上経って初めて聞くのです |
し、良し悪しは別としても筆者は大いに肩の荷を下ろした感と胸の透く思いを強くし |
た次第でした。 |
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4.おわりに |
このような理論は、筆者の80年の人生では残念ながら一度も耳にしていないばかり |
か、社会に認められた研究の結果であるとも納得したことはありませんでしたので、 |
未だ実は半信半疑なのですが、当該本の著者の先生によれば、その理由は明白・明確 |
で、男性脳にとって、“おしゃべりは危険だから”が行き渡っていると言われるので |
す。男性は何万年も狩りと縄張り争いをしてきているため哺乳類のオスの宿命でもあ |
るのですが、狩りの現場では、“互いの気持ちに拘り、共感して気付く”脳神経回路 |
よりも、“目の前の事実に拘り、問題点を即座に見付け出し、さっさと動く”脳神経 |
回路を優先して使う男子の方が、圧倒的に命を長らえやすいので、その結果、このタ |
イプの脳の持ち主には以来現在に至っても子孫にまで遺伝し、特有の回路として保持 |
されてきているのだと説明されていました。 |
命掛けで耳を澄ます狩人の隣に、べらべらしゃべる人がいたら、生命の危険をも感 |
じることになるでしょうから、そうはさせないように、申し送りがなされているのだ |
と思われます。少し都合が良すぎる解釈になりますでしょうか。 |
了 |
2023年8月8日(火)暦では立秋とはいえ熱暑の続く日に暑気払いの一文として記す |
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2.オノマトペや多義語について |
なかでも日本語のオノマトペ(ア)の果たす役割についてはいろいろ思い起こされ |
ます。オノマトペ(今でもまだオノマペアと呼ぶ人も多い)はいわゆるチュンチュン、 |
ワンワン、キャンキャン、ミンミン、カナカナ等の擬声語、ガヤガヤ、ガチャガチャ |
等の擬音語、ソワソワ、フラフラ、ヨレヨレ、ダラダラ、イライラ、ムカムカ、ドキ |
ドキ等の擬態語をこれほど多くを持つ言葉は多分日本語の他にはないだろうと思われ |
ます。 |
生まれてしばらくして母親や周囲の人々の交わす言葉は、オノマトペの繰り返しで、 |
赤ちゃんはこれ等のオノマトペから言葉を覚え、語彙を増やしてゆくのだと思います。 |
コミュニケーションを余り学問的にしないために、オノマトペは大きな役割を演じて |
いると思います。日本語のオノマトペで面白いのは、「カサカサ」と「ガサガサ」、 |
「コロコロ」と「ゴロゴロ」、「コソコソ」と「ゴソゴソ」と数え上げれば幾つも思 |
い浮かべることができるくらい濁点の付いたものと付かないものが指す感じが大きく |
違うことではないでしょうか。 |
もう一つは、多義語の果たす役割もまた昨今では大きくなってきていると思われま |
す。英単語の“strong”は“relationship”にくっつけば、強く結びつけられた関係 |
を表すのに最適の言葉になるし、”coffee”に付けば、「濃い、苦みのある味」を連 |
想しやすい。面白いのは、日本語になったオノマトペの中には、多義語の要素をそれ |
自身に持っているものが多いことでしょう。例えば、カチカチは音がロック用にもっ |
てこいの固い氷を言うのによいし、「あの男は頭がカチカチで、応用が利かないので |
困るんだよなぁ!!」などと使えば、堅物男か、融通の利かない無骨者の様が連想で |
きるというものです。 |
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3.日本語の呉音(ゴオン)と漢音(カンオン)の二通りの音読みについて |
日本語の音読みは、6世紀に日本に入ってきた中国の呉時代の音(オン)即ち、平 |
等(ビョウドウ)、如来(ニョライ)、老若男女(ロウニャクナンニョ)等と8世紀 |
以来日本に入ってきた漢時代の音(オン)漢音とから成り立っています。呉音は未だ |
日本人に完全に馴染んでいるとは到底言えないでしょう。仏教用語にはたくさんの呉 |
音が使われていますので、僧侶や寺院仏閣関係者には生活に密着した言葉として生き |
た言葉になっているはずです。 ましてや大昔の日本では、とくに万葉集の時代には、 |
詩(ウタ)を一首詠んでも、それを表記するには万葉仮名を用いなければならず、例 |
えば「コ」を表すにも、古、湖、己、許、去、虚のどれが用いられるかの用途が予め |
決められていましたので、「コ」の音を表すにも言葉により使われる字が異なってい |
たというのですから、詩一つ作るにも大仕事だっただろうと思い起こされるのです。 |
また、その時代の日本語には、 現在の英語のパ行のパァ、ピィ、プゥ、ぺェ、ポォ |
(Pa,Pi,Pu,Pe,Po)やツ行のツァ、ツィ、ツゥ、ツェ、ツォ(Tsa, Tsi,Tsu, Tse, Tso) |
と同じ発音があったことが分かるのです。現在でも大陸からの渡来人の影響を受けて |
いた地域に残る方言には、これ等の現在では使われていない発音の組み込まれた言葉 |
が実在しているということです。例を挙げるほど勉強をしていませんので、受け売り |
を文章にするだけの無責任なことになりますがご勘弁ください。 |
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1.ショック・ドクトリンとは |
社会や世間のショックになること、例えば戦争、クーデター、自然災害や大恐慌等 |
の瞬間を利用して、自分たちに都合の良い方向へ、政策や取り決め、決定事項の解釈 |
を導入し、国民の思考が停止した瞬間を狙って驚異的なスピードで従来と全く違うこ |
とを実現し、巨満の富や利益等を獲得する策を指しています。 |
近年の典型的な例としては、 |
(1)新自由主義の導入およびその実現、 |
(2)新型ウイルス感染症のパンデミック宣言を利用しての医療ワクチン特需・業界 |
再編 |
(3)9.11テロ後の警備産業のビジネス特需(後述するグーグル、ヤフー、マイク |
ロソフト3社がビック・テック企業として、主要プレイヤーとして事業を集中 |
して手にする) |
(4)北京五輪が多国籍企業の最新機器売り込みに裏道を作ることになった、等を上 |
げることができるでしょう。 |
つまりはそれらの時々の非常時に、権力を備えている為政者が、採れる重要な問題の |
解決のために、ある意味ではトリックにも似た緊急退避策と呼んでも良い便法を、多 |
くの場合決められた国会の議決とか、必要な手続きを取ることなく、閣議決定とか、 |
政令等の特例を以って実行することなどが当てはまります。 |
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2.世の中のデジタル化の進捗は? |
デジタルテクノロジーの進化によってグーグル(Google)、アマゾン(Amazon)、 |
メタ(Meta、旧フェイスブック Facebook)にアップル(Apple)やマイクロソフト |
(Microsoft)などのいわゆるビッグ・テック企業(Big Tech Enterprise)は、サー |
ビスと引き換えに一般ユーザーの個人情報を企業に売ることで利益を上げてきました。 |
けれども、当初からアメリカやヨーロッパでは、プライバシーの観点からこうしたビ |
ジネスを問題視する声が、議会や人権団体から上がっていました。都合の良いことに、 |
2001年9・11テロというショックによって、政府側に国民の個人情報を監視するドク |
トリンが、あっさりと合法化されてしまったのでした。その数年後にフェイスブック |
(Facebook)やツイッター(Twitter)、ユーチューブ(YouTube)が開設されると、 |
米当局は「テロ対策」を理由に、それらの企業にデータを出させ、直接国民や外国人 |
の個人情報まで取るようになります。そして2020年、さらに大規模なショック材料が |
やって来るのです。中国の武漢市で最初に報告され、瞬時に世界に広がった、新型コ |
ロナウイルスです。ところが、この新型コロナ・パンデミックというショックの最中 |
に、経済対策として日本政府が中心となってマイナンバーを基盤とする日本のデジタ |
ル化を一気に加速させるショック・ドクトリンが熱心に話し合われていたのです。 |
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3.日本のマイナンバー制度を中心にしたデジタル化の問題点は何処にある? |
2016年1月にスタートした特定個人識別番号(マイナンバー)制度は、最初から国 |
民には不評でした。政府からはいろいろメリットを宣伝されるが、世論調査では残念 |
ながら78%の国民は「進められている制度改革に不安を感じる」と答えているのです。 |
そもそも2002年に「住民情報を全国市区町村で共有することにより便利になる」とい |
う謳い文句で導入された住民基本台帳ネットワークシステム(住基ネット)を遂行す |
るため、毎年百数億円、14年間で2,000億円もの税金が投入されながら、全国での普 |
及率は、5.5%にしか過ぎず、投入額は殆ど生かされていません。 |
殆どの金は全国9ヶ所に設置された財団法人地方自治情報センターに総務省から天下 |
りした役員達の高額な報酬として消えていたと言われています。実態がバレて登場し |
たのがマイナンバーだったのです。これ等のニュースの経緯は新聞その他のマスコミ |
情報によりご承知の通りです。普及が進められなかった地方自治情報センターの看板 |
は速やかに降ろされたのですが、厄介なことに代わりに「地方公共団体情報システム |
機構(J-LIS)」という看板に差し替えられたのです。 |
マイナンバーを登録したら5,000円、健康保険証を登録したら7,500円、さらに給付 |
金等の公金の受け取り用銀行口座を登録したら7,500円、三つ合わせて計20,000円 |
をもれなくポイントの形で貰えると政府広報オンラインは宣伝し、このキャンペーン |
になんと1兆8,000億円が投入されてしまったのです。ご承知のように、岸田総理は |
この巨額な費用が「日本社会全体を、デジタル化するために必要なのだ」と国会の質 |
疑で答えておられますが、具体的な内容とか用途は示されておりませんので、何とも |
判断できかねます。筆者は決められたことは直ちに実行しなければ咎められるように |
感じる忠実な国民ですので、住基番号も取り、マイナンも取りましたが、さすがに健 |
康保険証の登録以降は行っておりません。従って上記のポイントも一切受けてはおり |
ません。考えられている制度の利点やそれによる日本社会全体のデジタル化の功罪は |
現在までの経緯からは何とも言えないでしょう。唯一言えることは、十分な地ならし |
もできないところで、功を焦って余りに短兵急に決定しようとすれば、それだけ阻害 |
要件も絶えないのではなかろうかと思われます。もう少し時間を掛けることが現時点 |
では最善策でしょう。 |
今回はここまでに留め置きましょう。 |
了 |
2023年8月5日(土) 記 |
| | | |
このたび、数式を利用して囲碁の布石を検討してみたので、ここに報告する。 |
衆知のように、地を取る上で効率のよい隅を優先的に占め、次に辺を大切にするの |
が従来からの基本的布石であるが、本レポートでは、あえて四隅と三辺を白に与え、 |
残りを黒が取ったらどうなるかを検討してみた。 |
具体的には、図1の黒地と白地の差 d: |
図1 コの字形大模様(k=4 の例) |
d: =(黒地)-(白地), (1) |
を図のkの関数として求めてみた。これを次式に示す。 |
(黒地)= {19-(k+1)}{19-2(k+1)} |
= 2k^2 - 53k + 306, (k=0,1,2,・・,8), (2) |
(白地)= 19^2 - {19 - (k-1)}{19 - 2(k-1)} |
= -2k^2 + 61k - 59, (k = 1,2,3・・,10), (3) |
∴ d = 4k^2 -114k + 365, (k = 1,2,3,・・,8), (4) |
図2 kの関数 d(= 黒地 - 白地) |
この式(4)をグラフで表すと図2になる。 |
この図2から次の事が読み取れる。 |
【黒地に入り込んだ白をすべて殺すことを |
前提に、白をk=(*)3.6線より辺の方に押し込めれば、 |
6目半のコミを考慮しても、黒の勝ちである。】 |
(事務局注:Asymptotically Equal) |
|
|
白を3線または4線に押し込むのは、さほど難しくないと思われたので、AIを相手 |
に十数局試してみた。この結果、筆者黒の勝率が60%であった。 |
参考までに、この一例を図3〜図11に示す。 |
| | | |
3.自分の立ち位置はしっかり守られてきただろうか? |
人生80有余年の筆者には、いま冷静に過去のいろいろな人々との交流の中で、自分 |
がどのように絡み、どのように対処してきたかを謙虚に反省してみると、国内の人々 |
よりむしろ多くの海の向こうの人々の影響を強く受けていることを考えないわけには |
行きません。日本での37年のサラリーマン生活の殆どを海外営業という仕事に関わり、 |
海外との往来と外国人との折衝に当たり、駐在や留学・遊学期間を含め、また、自分 |
で事業を起こし、2021年まで23年間海外との文通と一人“何でも屋”として海外諸国 |
を飛び回ってきたのですから当然のことでしょう。積算して10年以上を海外で生活し |
た計算になりますし、メールや電話を通して即断即決の日々を送ってきたのですから、 |
自然に自分が一番大事な根幹にあるのは当然でしょうが、日本社会の常識に鑑みて、 |
この日常の自分の立ち位置が片寄っていないかの心配は、常に心の片隅に付いて回っ |
ていたことでした。 |
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4.おわりに |
人生には「和願施」即ち“いつでもニコニコ笑顔を保っていなさい”が必要なこと |
は分かるのですが、そのためにはニコニコ顔になるための心のゆとりが必要でしょう |
し、十分な素養も培われていなければ、そう簡単に笑顔を急に作ることなど出来ない |
相談でしょうから、相当に含蓄のある日頃の絶えざる精進が、努力の積み重ねが大事 |
だとなるはずです。当たり前のことですが、事程左様に仏教に限らず宗教上の教えは、 |
皆ある程度の努力をし、精神を磨き上げた上で初めて理解できるもので、そこに達す |
るまでの道程を如何にクリヤーするかの各人の判断と実行については多くを語ってく |
れませんのが、何はともあれすべからく各人が自分での務めを果たすことが大前提に |
あることを忘れてはならないでしょう。格言や教えを解釈・理解するのはその後のこ |
とです。 |
分かり切った禅問答のようになりましたが、筆者としては十分意を尽くしたと思っ |
ています。 |
了 |
2023年7月17日 酷暑の“海の日”を家に籠って綴る |