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1.プロローグ |
筆者は80有余年の人生を振り返るとき、何よりも先ず一番に思い起こされることは、 |
本当に好奇心の塊で生まれてきて、そのままで育って、青年時代を通過し、勤めをし、 |
所帯を持って大人の世界に足を踏み入れてもなお、その精神は聊かも弱まらず、縮小 |
もサイズダウンももたらさなかったことだろう。不思議と言えば不思議そのものであ |
り、ワイフの言葉を借りるなら、「発達障碍者」なのかもしれない。人間として必要 |
なある部分が未発達のまま、高度の細胞分裂をすることなく、留まってしまったのか |
も知れない。好奇心の裏返しで、欲張りで、何にでも興味を持ち、他人が出来ること |
で自分が出来ないことがあるなどは、何としても許されないという思いが大変強かっ |
た。 |
ただ、好奇心でもその対象はさすがに齢と共に大きく変わり、幼少年期には生き物 |
や草花に、青壮年期には芸術や芸能に、そして世界の国々に、退職後は第二の人生に |
当たって、文章を書くことに興味を覚えるようになり、それと共に言葉や語彙に強い |
知性を求めるようになった。それが、年老いて少し方向が変わり、今や専らの関心は、 |
言葉遊びや言い回しに、そして何よりも自分や自分の境遇を表わす言葉や文章に異常 |
な興味と触手が及んでならなくなっている。 |
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5)かの川端康成がノーベル文学賞を受賞したのは、1968(昭和43)年秋で、筆者は |
初めてスペインの国立バルセロナとセビリアの両大学でスペイン語を母国語にしない |
国々での研究者向けの夏期並びに秋期の外国人講座を受講しての帰路ベルギーの首都 |
ブラッセルの新聞スタンドで英字新聞を求めて知ったのであったが、当の川端は事前 |
に関係者から受賞の旨の連絡を受け、ノーベルの名前が分かる人だけが分かる方法で |
「野(ノー)」と「鈴(ベル)」の2字を織り込んだ言葉遊びを兼ねた名句を詠んで |
いたことが後日判明したことが有名な話として伝わっている。その名句とは、 |
「秋の野に鈴鳴らし行く人見えず」 |
で、これは筆者の余計な勘繰りになるが、何人かの国文学者が言われれているように、 |
次の古短歌の本歌取りとして作られたのだろうと思う。 |
「秋の野に咲きたる花を指折りかき数ふれば七種(ななくさ)の花」 |
遊び心もここまで出来れば最高だなと思うこと至極である。 |
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6)言葉遊びでなく、ここまで書ければ、」日本語の美しさの極致と思うが、夏川草 |
介は小説「勿忘草の咲く町で」のエピローグの最終頁の締めの文句として、次のよう |
な美文を綴られている。 |
「新緑の山麓から、安曇野のただ中へ、ゆったりと弧を描く見事な七色が見えたのだ。 |
いつになく大きな虹の架け橋が、梓川の両岸をつないでいる。雲はすでに全く流れて |
見えず、空は抜けるように青い。山も空も木も花も。ことごとくが明るい。安曇野は、 |
春であった。」 |
この文を思うとき、今でも漢字の次の言葉や単語の幾つかを思い浮かべ、日本語の |
言葉と漢字の言葉の大きな違いをしみじみ感じるのである。 |
*満月青山 「見渡す限り青い山が連なっているさま」が思われる。 |
*満月蕭条(しょうじょう)「見渡す限り草木が枯れてさびしいさま」が浮かぶ。 |
*紫苑色(しおんいろ)に凪わたった海 「海凪(みなぎ)」という言葉も思い起 |
こされる。 |
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1.はじめに |
”April teases us with what we can’t have (私達を悩ませる残酷な4月)”と |
いうタイトルで、本文の出だしは以下の桜の木の下の宴会の思い出が綴られています。 |
”One of my first memories of Japan is partying under the cherry trees in |
Kyoto, I can't remember exactly what we ate and drank, but I remember every |
thing was delicious and very Japanese. Since that Hanami party, about 20 |
years ago, I’ve often thought of April in Japan and how different it is |
from our April here in the US.” |
(私の日本に纏わる最初の頃の思い出の一つが、京都の桜の木の下で宴会をしたこと |
です。何を食べたり、飲んだりしたのか正確に思い出せないのですが、何もかもがお |
いしくて、とても日本的だったことを覚えています。20年ほど前のそのお花見以来、 |
日本の4月を思い出しては、ここアメリカの4月と何で違うんだろうと思うことがよ |
くあります。) |
この日本語訳はアルク社から2017年7月28日に初版が出された”Tea Time Talk” |
のタイトルの本の第5章に載せられているエッセイの翻訳を担当された鈴木香織さん |
の訳による。 |
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2.このエッセイの著者ケイ・へザリさんとは |
このエッセイは英語の先生として米国テキサス州から来日し、京都に数年滞在した |
後、1991年から15年間を東京に住まわれた米国人ケイ・へザリ(Kay Hetherly)が |
2009年4月に書かれたものですが、同氏は1996年頃から1998年までNHKラジオの英会話 |
番組に大杉先生のゲストとしてレギュラー出演されていました。米国自宅に戻られて |
から、日本の楽しかった生活を思い出され、たくさんのエッセイや読み物をNHK出版や |
アルク社から出されています。 |
冒頭に同氏のエッセイのタイトルを紹介して、その訳文を載せましたが、同氏は米 |
国では人々を悩ます残酷な4月が、日本では学期の始まり、ビジネス会計年度の始ま |
りで国民全員が一年の喜びに満ち溢れてスタートを切る晴れやかな時に満開の桜が最 |
高の取り合わせだと感嘆されているのです。その気持ちの溢れている部分を紹介しま |
しょう。上記に紹介した文の後に次のように続きます。即ち、 |
”I always loved that school starts in Japan when cherry trees are in full |
bloom. What better way to begin a new school year or a new job? It doesn’t |
really matter that in a couple of months, students will be tired of going to |
close and new employees will probably be exhausted from their jobs. April is |
all about starting fresh and hoping for the best”. |
(日本では桜が満開の頃に学校が始まるなんて、すごく素敵な、といつも思っていま |
した。新しい学校や仕事を始めるのに、これ以上素晴らしい時があるでしょうか? |
数ヶ月もしたら、学生は授業に出るのにうんざりし、新入社員は仕事にくたくたにな |
っているかもしれないけれど、そんなことは大した問題ではありません。大切なのは、 |
4月は新鮮な気持ちで新しいことを始め、うまくいくように願う時だ、ということな |
のです)。 |
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3.へザリさんが日本滞在を通して感じ取られ理解されたこと |
同氏は上記に紹介した文章の後に、何故4月が米国や欧米の人々を悩ませ、残酷な |
気分にさせる根底にある事実と考え方を次のように説明しています。 |
その一つ目は、「4月のにわか雨は5月の花を連れて来る」という昔から伝わる教 |
訓的な文句、日本で言う諺(ことわざ)を挙げています。意味としては、希望には満 |
ちてはいますが、5月に花が咲くためには4月に雨が必要ですということで、この真 |
の意味は、「悪い時は往々にして良い時を導いてくれるものだということだそうです。 |
筆者もこの諺は知りませんでした。二番目に、「4月は残酷極まる月だ」という有名 |
なT.S. エリオットの詩「荒地」(T.S.Eliot’s famous poem “The Wasteland”)の |
一行目に出てくる表現で、多くの欧米の人々はこの詩を読んでいますが、読んでいな |
い人でもこの短い文句は知っているようです。 ”残酷である”という表現の裏には |
「4月は、私たちの周囲、地球上の生き物が皆生き返る新しい始まりと期待の時です |
から、自分もそうなりたいものだと思ってみても、人間の人生の中ではその様な再生 |
は叶えられませんので、「残酷だ!」になるわけです。人間の手に入れられないもの |
が自然界の中では多く、人間の目をちらつかせ、全く残酷なことだ!になるわけです。 |
4月の花(日本では桜)を見ての欧米人の心と日本人の心は、このように違うのです |
が、唯一共通しているのは5月になれば夏が近く、待ち遠しい気持ちに変わる心には |
変わりはないということでしょう。 |
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4.おわりに |
今回、筆者が何故ケイ・へザリさんのエッセイを引き合いに出した理由は、同じ北 |
半球に住みながら、ところ変われば習慣や人々の心の持ち方、季節の感じ方にもはっ |
きりした違いがあることが面白く思えたのと、米国人が日本に住んでみて初めて日本 |
人の感じ方から生まれている生活のサイクル、教育や事業の開始年度の始まりの違い |
に気付き、むしろ自分たちの方がおかしいのではなかろうかと再考しようとする態度 |
が素晴らしいと共感したからなのでした。 |
そこで、実は筆者は欧米諸国と日本の学期やビジネス年度の始まりが違うことが、 |
日本と欧米との人間の往来や留学、起業、就職に余計な神経が必要になり、阻害要因 |
になっているのではと懸念されるので、日本もそれぞれの開始時期を欧米並みに変更 |
することを真剣に考えてみては如何かと提案したい気持ちに長い間駆られていました |
が、このへザリさんのエッセイを読んで、お互いの良さを感じ取れるならそれを良し |
とすることが自然というか、むしろ最高なのだろうと考え直すようになりましたので、 |
異文化は接触して違いを認め合い、理解し合うとこがやはり大事なことと思うような |
りました。 |
なかなか教訓に満ちたエッセイがいっぱいですので、是非この機会に皆様にもお目 |
を通されることをお勧めしたく思います。 |
了 |
2023年3月22日(水)東京の桜の満開のニュースを |
聴いて急遽思い出して纏めてみました。 |
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ヘロンの公式とは、3辺の長さが a,b,c の三角形の面積S(a,b,c)を与える次式で |
ある。 |
S(a,b,c) = √{ s(s-a)(s-b)(s-c) }, s≡(a+b+c)/2, (1) |
この公式の証明または導出には、内接円の半径を利用する方法および三角関数と余 |
弦定理を利用する方法等が知られているが、いずれも高校以上の知識を必要とする。 |
本レポートは、この公式をS(a,b,c)がもつ自明な性質(※)を利用して、中学生でも |
理解できる方法で導出するものである。 |
※ 関数 S(a,b,c)に関する事前情報(prior information) |
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先ず、どんな(a,b,c)がS(a,b,c)をゼロにするかを考 |
図1,2 |
えると図1,2,3,4に示す4つのケースが存在する。 |
図1のケースは、3つの頂点A,B,Cが一点に凝縮した |
ケースであり、次式が成立する。 |
a=b=c=0, ∴ (a+b+c)=0, (2) |
図2のケースは、頂点Aが対辺上に移動したケースで |
あり、次式が成立する。 |
a=b+c, ∴ (b+c-a)=0, (3) |
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図3のケースも同様に次式が成立する。 |
図3,4 |
b=c+a, ∴ (c+a-b)=0, (4) |
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図4のケースでも次式が成立する。 |
c=a+b, ∴ (a+b-c)=0, (5) |
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次に、どんな(a,b,c)がS(a,b,c)を正値にするかを考えると言うまでもなく(a,b,c) |
が三角形を形成する図5のケースである。 |
このケースでは、 |
図5 |
a>0 ∩ b>0 ∩ c>0, ∴ (a+b+c)>0, (6) |
∩:且つ (and) |
は、もちろん次式の三角不等式が成立する。 |
a< b+c, ∴ (b+c-a)>0, (7) |
b< c+a, ∴ (c+a-b)>0, (8) |
c< a+b, ∴ (a+b-c)>0, (9) |
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上記より、S(a,b,c)をゼロまたは正にする(a+b+c),(b+c-a),(c+a-b),(a+b-c)がど |
んな場合かをまとめると次表を得る。 |
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この表は、次の事を示している。 |
--------------------------------------------------------------------------- |
(a+b+c),(b+c-a),(c+a-b),(a+b-c)のうち |
(1) 1個以上がゼロのときS(a,b,c)がゼロであり、 |
(2) 全部が正ならS(a,b,c)が正の値をとる。 |
--------------------------------------------------------------------------- |
この性質を次式が備えている。 |
(a+b+c)(b+c-a)(c+a-b)(a+b-c), (10) |
ところで、求めるS(a,b,c)は面積なので長さの2乗の単位をもつが、式(10)は長さ |
の4乗の単位をもつ。そこで次式を考える。 |
√{(a+b+c)(b+c-a)(c+a-b)(a+b-c)}, (11) |
この式は、(a,b,c)が、点または線分を表すと、正しくゼロをとり、三角形を構成 |
するとき、正しく面積の単位をもつ正の値をとるが、そ |
図6 |
の大きさが正しいかどうかは、不明である。そこで、 |
面積の判っている図6の例で式(11)を試すと: |
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√{(3+4+5)(4+5-3)(5+3-4)(3+4-5)} |
= √{ 12 x 6 x 4 x 2 } = √{ 576 } = 24 |
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結果が正解6の4倍の24になる。そこで次式を得る。 |
S(a,b,c) =(1/4)√{(a+b+c)(b+c-a)(c+a-b)(a+b-c)}, (12) |
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図7 |
念のため、この式(12)を異なる2つの例 図7,8で試 |
してみる。 |
図7では |
(1/4)√{(21+20+13)(20+13-21)(13+21-20)(21+20-13)} |
=(1/4)√{ 54 x 12 x 14 x 28 } |
=(1/4)√{ 254016 } = 504/4 =126 ; OK! |
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図8では |
図8 |
(1/4)√{(16+25+39)(25+39-16)(39+16-25)(16+25-39)} |
=(1/4)√{ 80 x 48 x 30 x 2 } |
=(1/4)√{ 230400 } = 480/4 =120 ; OK! |
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異なる3例で偶然正しい値が出るとは考えにくいので、式(12)が正しいと見られる。 |
ちなみに(12)式を変形するとヘロンの公式を得る。以下これを示す。 |
S(a,b,c)=(1/4)√{(a+b+c)(b+c-a)(c+a-b)(a+b-c)}、 (12) |
=√{(a+b+c)(a+b+c-2a)(a+b+c-2b)(a+b+c-2c)/(2x2x2x2)} |
=√{((a+b+c)/2)((a+b+c)/2 -a)((a+b+c)2 -b)((a+b+c)/2 -c)} |
=√{s(s-a)(s-b)(s-c)}, s≡(a+b+c)/2, (1) |
| | | |
以上、S(a,b,c)に関する自明なる3つの情報: |
(@) (a,b,c)が点または線分を表すとき、S(a,b,c)はゼロである。 |
(A) (a,b,c)が三角形を表すとき、S(a,b,c)は面積の単位をもつ正の値をとる。 |
(B) (a,b,c)=(3,4,5)のとき、S(a,b,c)は6である。 |
だけからヘロンの公式を導出した。 |
参考までにAlbert Einstein(1879.3.14〜1955.4.13)の言葉を記し、筆をおく。 |
If you can't explain it to a six year old, you don't understand it yourself. |
<以上> |
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1.気を静めるために、音楽を聴き、アルコール飲料の力を借りるのを常としていた |
(暫く前まではこれらにプラスして煙草をも頼りにしていた時期もあった)が、筆 |
者は、1〜2時間ゆっくりその環境に浸っていれば、アルコールも音楽も、もうそ |
れで十分で、自分の内と外とが両(ふたつ)ながらに静まって行くのを感じたもの |
であった。現在も基本的には同じ考えであり、態度である。筆者にはこの方法が覿 |
面(てきめん)の効果を得る最良の方法と信じ切っていたからである。 |
尤も酒を飲むことを覚えて、友とつるんだり、群れたりする前に、一人で寂しく |
飲むと きには、特に若い時には、酒の相手や肴は「愚痴」と「未練」と「長い |
夜」だった。もしかすると、酒の味そのものがこれら「愚痴」と「未練」とイコー |
ルで、「長い夜」は酒の友だったのかもしれない。もう少し掘り下げて、幅広く考 |
えれば、展覧会で絵画や彫刻、その他の美術品を鑑賞し、音楽会でゆっくりクラシ |
ックを聴くことも、そして好きな作家の作品を読み、目で文字を追いながら頭を休 |
めるのも最高の方法であろうが・・・。 古風な小説の中では、例えば、米国のイ |
ーライ・ブラウン(Eli Brown、現在ベストセラーとなっている”Cinnamon and |
Gunpowder” 邦訳 「シナモンとガンパウダー」、東京創元文庫の著者)が引用 |
しているように、”心を静めるために、首にかけたロケット・ペンダントを開いて |
中味の匂いを繰り返し嗅いだ”などという器用な方法も成り立つだろう。 |
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3.身体を壊してから筆者はアルコールよりも本に救われる”本の虫”になってしま |
った ように感じる。そう言えば、鎮静効果のあるものは、趣味に没頭できること |
ではなかろうか。筆者も蝶を相手の生活が楽しくて仕方がなかった青春時代には飼 |
育箱の中の珍蝶の幼虫が、一令、二令、そして脱皮を繰り返して最終の五令に達し |
て、蛹化(さなぎになること)する時や庭の食草に産み付けられた卵が成長する過 |
程を毎日何回となく見届ける時には大きな期待が生まれ、それまでの苦しかった世 |
話が一度に忘れ去られる瞬間で、気持ち的には最も安定した気分になっていたもの |
だった。好きな絵が仕上がって、達成感が味わえる時にも同様の安堵感を覚えたも |
のだし、出したいと思った色が、存分に紙の上に表わすことが出来、創出できた時 |
の喜びは、精神安定にはそれ以上のものはない気持ちにさせられたものだった。 |
仕事の虫は多分仕事に従事しているときに、同様の静けさと安定を感じ、享受し |
ているのであろう。いずれにせよ、他人から或いは他人の顔色を窺いながら仕事を |
進めるなどという環境では鎮静という言葉や身のこなしに到底合致しようがなかろ |
う。長い航海を繰り返す船舶では、生肉の元として船内にわざわざネズミを飼って |
いるとか、サソリを籠に入れて育てているよく聞かされたが、いろいろ工夫を凝ら |
して船員の胃袋の慰めをしているらしい。船員が安静を感じられるのは、ひょっと |
するとそれらを口に出来た瞬間なのかもしれない。とすると、人間の精神の安静な |
どというものは、生活の環境、職業の種類、住居の態様の違い等で幾重にも違いが |
あり、一概に論ずることは不可能に近いのかも知れない。 |
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4.閑話休題、首題が変わるが、会社の成長や経営を考えても、いろいろな局面があ |
り、特に現在のように変化や動きの速いときには、一つだけの考えではどうにも切 |
り抜けは不可能ではないかと思う。早い話、短期的な利益より長期的な目標の方が |
会社を成長させるとの主張は、株主は勿論、社内でも理解を得るのは難しい。新型 |
コロナウイルスの感染拡大で社会の孤立が深まり、加えてロシアのウクライナ侵攻 |
で世界の分断が加速された中、会社の成長目標設定を確実に実現させながら、利益 |
を出し、経営の安定を持続することは、至難の業である。 |
個人の安静を論じて序に会社の安定にまでつい手が滑ってしまったが、今回のエ |
ッセイの本題ではないので派生話題として触れるに留め、ペンを擱くこととしたい。 |
了 |
2023年2月8日(水) 記 |
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コロナ感染が収まりつつある中で、昭和48年(1973年)4月に東京計器に入社した |
同期のうち5名がこの2月21日に品川駅近くの居酒屋に集まった。ここ数年、コロナ |
禍で飲食会の中止・自粛が続く中ではあるが、遂に愛社・愛酒精神旺盛で淋しがり屋 |
同期の仲間 |
の仲間が意気投合し「そろそろ、いいコロナ」の乗りで |
集まった。何と、振り返れば、入社してから、この3月 |
で50年の歳月が経つわけだ。参加者の一人が、新入社員 |
の入社式の写真のコピーを持ってきてくれた。鮮明さに |
はかけるが、50年前の初々しさや今も面影を残す仲間の |
姿を探して興じていた。飲み食いするのも忙しいが、各 |
人の話題で盛り上がった。話の中心は病に関することが |
多く、中でも前立腺に関する話であった。「夜中に2回 |
〜4回起きる」とか「出が悪くて時間がかかる」とか「もよおすと我慢ができず、ち |
びってしまうとか」深刻且つ微細な話が多かった。 この話をしている間にも我慢で |
きずにトイレ通いが続いていた。現実は厳しく情けない。中には、「寝てから起きる |
まで一度もトイレにいかないよ」という人もいて逆に驚きの声があがった。 |
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1.はじめに |
世の賢人と言われる学者や現在の地政を預かる為政者の言葉を借りれば、我々は現 |
在二つに分かれる分岐点にいる。少数の富裕層が富を握る極端なエリート社会か、豊 |
かな中産階級のいる社会かのどちらかだ。しかし、後者は自然発生的に沸き起こるも |
のではなく、自分たちで努力して勝ち取るものだ。」と、危機感を滲ませた発言であ |
る(筆者注:2008年のノーベル経済学賞受賞の米国プリンストン大学教授のポール・ |
グルークマンが発言者の代表格である)。 |
一方では、「資本主義は最悪のシステムの中でも最善のシステムである」と主張す |
る経済学者や他部門の識者も増えている。或いは逆手にとって、「世界の主要国で長 |
く続けてきたので資本主義自体変わることを望んでいるとか、批判されることを望ん |
でいる(筆者注:これ等の発言における代表者はオーストリア出身の経済学者ヨーゼ |
フ・シュンペーター)。金持ちでも貧しい人でも、誰もが同じヘルス・ケアを受ける |
ことが出来るので、資本主義下だからとか社会主義下、共産主義下だからという区別 |
や判断は出来ない。ただ、同じものを食べても、舌が肥えていれば、さほど美味しい |
とは思わないとか、普段食べられない人には途轍もなく美味しく感じられるものであ |
る、といった受け取り方の違いが生じてしまう。 |
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2.今後の動静は? |
世界はフラット化して、開放的になって、いろいろな新しいシステムがオープンに |
なっている国々が?栄しているが、日本はあまりにも一国内に留まり、閉鎖社会に閉 |
じ籠っているように思われる。言葉の問題もあるでしょうが、日本はもっと海外に出 |
るべきだと思うし、海外での文筆活動を始めとして、研究論文の発表や特許、実用新 |
案の登録等も含めて、あらゆる発表の機会を広め、深める必要が欠かせないと思う。 |
お隣の中国は底辺から最高の富裕層までの全ての段階で底上げがなされ、社会主義化 |
された資本主義が成功しているようで、その結果として今や日本も抜かれた世界のナ |
ンバーワンの生産立国、国民一人当たりの生産高でも上位に挙げられる国に変わろう |
としている。その裏には世界を股にかけて活躍する華僑を始めとする中国人の旺盛な |
生活力とそれを支える幅広いコムニケーション能力があると思うのだが如何であろう |
か。 |
少なくとも、日本は批判を浴びている事柄や改善や改革を迫られている事項につい |
ては一日も早く着手し、履行することが望まれよう。最近それらの活動に向けられる |
努力も減退しているように感じると同時に、着手されたことでもそのスピードが急激 |
にダウンしたように感じてならない。筆者の不勉強から来る杞憂でなければと祈るこ |
と頻(しき)りである。 |
日本が早急に取り組まねばならないことは、次の二つではなかろうか。 |
(1)労働者、特に必要不可欠な仕事に従事している人々、例を挙げるなら毎日の家 |
庭や工場・事務所からのごみの収集に当たっている人々、バスや電車の運転手、 |
病院や各種ホームで働く看護・看護師・助手、公園や公道の清掃に従事している |
ワーカー、宅配の従事者、郵便や荷物の配達者、それに食料の支給源を担う農・ |
畜産従事者等々の賃金を引き上げること。 |
(2)官公庁、民間会社、各種団体の無駄な仕事をなくすこと。 |
日本国内では直接自分の身に関係し、応えねばならなくなる人々、高級官僚や会 |
社団体の以下に詳細を説明する無駄仕事と批判される仕事に従事している人々が |
余りにも多いために、未だに大きな声にはなっていないが、筆者はこれら旧態然 |
としたやり方をいつまでも踏襲していると世間というか、世界の国々の笑いもの |
にもなり兼ねないと危惧している。 |
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1)Flunkies (太鼓持ち) 受付係、秘書 |
2)Goons (用心棒) 企業弁護士、電話営業、ロビイス |
ト、広告・広報担当 |
(競合会社がやっているから、自 |
社もやるの発想) |
3)Duct Tapers(落穂拾い) (何か不都合が起きた時のために |
入要、中には謝罪するためにだけ |
置かれているものもある) |
4)Box Tickers(社内官僚) (最近に多い企業のコンプライア |
ンス部などがその典型、対外部の |
ためだけでなく、内部の偽りのた |
めにも必要と考えられている) |
5)Task Makers(仕事製造人) (2種あり、一つは監視する必要 |
のない人を監督するため。二つ目 |
は他の人にBS職を創り出すこと |
で、これら二つは、相互に密接な |
関係がある。) |
良い例が、中間管理職(特に、部 |
下の仕事を監督する名目がもたさ |
れている。部下はこのために不必 |
要な書類を作らされ、報告書を記 |
載しなければならない無駄をして |
いる。生産性の劣化、悪循環の源 |
泉になる。 |
もう一つ留意すべきことは、自動化が進めば進むほど、忍耐のいる仕事(Cari |
ng Labour)が必要になる。例えば、病人対応の介護・看護師、迷子・認知 |
症の助け人、けんかの仲裁人、これ等はAIのロボットでは血の通った対応は出来な |
い。従って、AIの導入によって幾つかの仕事が奪われて、無くなったり、従事者が |
職を失うことを懸念する前に、職務分析を風通しよく実施し、人を単に忙しくさせる |
ために意味のない仕事を創り出すことを極力排除し、これら悪弊をもたらすBS職を |
なくすことが必要である。出来ればBS職をなくす前に、生産活動従事者やブルーカ |
ラーの賃金を引き上げることを先ず率先して行うことが望ましいでしょう。 |
で生まれたロボットを誰が管理するかもこれからの日本の組織の在り方を考える上 |
で大変大事な案件でしょう。さらに、ロボットが生んだ経済効果や価値、所得を如何 |
に平等に関係者に分配するか、その仕組みが大変重要になる。ロボットは医者にはな |
れない。ヘルスケアだけでも十分にできるようにするには、放っておけば死に至る人 |
を如何にコントロールして優先的にケアできるか?ロボット化の結果、多くの人々が |
共通に自由な時間を一緒に過ごすことが出来るかを最優先事項として考えて、その元 |
になる時間と資金を如何にして全ての人々がベーシック・インカム(Basic I |
ncome)として平等に獲得できるか、シェア出来るかであろう。これが地球上で |
の小さいかもしれないが、ユートピアの始まりだろうと考えたいのである。 |
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3.おわりに |
上述したように、海外の学者や為政者は日本の無駄な仕事に就いている人の多いこ |
とにびっくし、大いなるショックを受けた。そして、「才能を無駄にしている」と映 |
ったのである。その上に、公務員や大手企業の従業員に「過労死」という問題が世間 |
を騒がせるに至り、この言葉自体に大変なショックを与えることになってしまったの |
である。「過労死」などという言葉は欧米では遠い昔に死語になっており、今の世に |
日本で現実の問題として議論している社会に呆れ果て、野蛮の現れでしかないとして |
日本の未開な社会の在り方と共に、これまで付き合ってきた日本との関係の持ち方を |
再検討せねばならないとまで言わしめているのである。信じられない現象がまだ残る |
国という悪評は早く拭い去りたいものである。過分に身分不相応な議論を展開したか |
もしれないが、棺桶に入る直前の老人ならこのくらい過激な言質もお目溢(こぼ)し |
いただけるのではないかと思ったのですが? |
了 |
2023年1月30日(月) 記 |
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1.はじめに |
「それはそれとして」は、日本最大の、いや世界一の仏教研究家、鈴木大拙がよく |
用いた言葉として知られていますが、問題の次元を切り換えるときに用いられる言葉 |
で、それまで話していた話題や議論の内容、考え方や感情等々を整理して否定するで |
もなく、肯定するでもなく、問題の次元を切り換え、より高い次元に引き上げる、心 |
理的なテクニックとも言えるものです。議論を否定的に導くのではなく、ネガティヴ |
な方向に進まないように、「しかし」と言う代わりに用いられるもので、パニック状 |
態に陥る前に、首尾よくリセットするのに都合の良い言葉で、続けて「今できること |
は、・・・」と続けるのに都合の良い言い回しであります。 |
この背景には、過去のことは後悔してもしょうがない。終わってしまったことで、 |
もう変えられないのだから、これからできることを相談して、建設的に組み上げてみ |
ようとか、新しく創造してみようとかの気持ちを生み出したい希望に繋げる方策と言 |
えるのでしょう。 |
一見すると、敢えて曖昧さをリードする、日本人向けの都合の良い便法のようにも |
感じられますが、十分な討議・討論をすることなく、安易に結論を急いだり、甲乙の |
色分けや良し悪し、賛否の旗色を鮮明にさせてしまうことを避け、余計な齟齬や紛糾 |
を防ぐ非常に賢明な方策で、如何にも仏教思想に適ったモノであると思います。 |
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2.閑話休題 |
それはそれとして(早速使っているわけではありません?!が、)卑近な例として |
以下の話を展開してみたいと思います。 |
「どうせ老い先短い人生だったら、これからは、美味いモンだけ食って死にたいな。 |
きっと年寄りはみんなそう思っている」。これは作家の中山七里が自作の小説「毒島 |
刑事最後の事件」(幻冬舎文庫)に収められている四番目の話し「奸佞邪智(かんね |
いじゃち:心がねじ曲がっていて、よこしまなさま)」の中で、物語の主人公の年寄 |
りに吐かせている言葉です。筆者が学生時代に身も心も信頼して預け、ザイルを結び |
合っていた岳友で、一線を離れて以来、長く癌を患い、すっかり元気をなくしていた |
が、数日前にひょんなことから久し振りに再開する機会が出来て、昼食を共にした際、 |
その友人が全く同じ台詞を吐いたのでした。勿論筆者の思いも同じですから、特に文 |
章の一字一句を頭に入れていましたので、余計に感慨深く、強烈に脳裏に残りました。 |
「考えることは本当に皆同じなのだなぁ?!」と。 |
最近再び議論の的にされている欧米の白人と黒人の差別主義について触れてみたい |
と思います。今の世に、差別主義者であると自ら名乗りを上げる人は一人もいないで |
しょう。リベラル社会では、そんな人は居てはならないからで、それは大原則である |
と言っても良いのでしょう。が、・・・しかし、「そういう自分自身が差別主義者で |
あると言えまいか?」と思われたことがありませんか。内心は幾分かでも感覚を持っ |
ているのではなかろうかと思うのですが・・・。ただはっきりさせてしまえば、社会 |
から抹殺されてしまうので、それが怖いので絶対に口には出さないだけではないので |
しょうか?筆者の解釈は間違っているでしょうか。 |
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(1)日本の労働市場の構成と枠組みを是非この機会に再考慮してもらいたいこと |
リモートの仕事に慣れてしまった労働者が工場やオフイスに戻るのを嫌がり、 |
出勤が義務になるぐらいなら職を変えようと考える若手や、それならば早めにリタ |
イアしてしまおうと考えるシニアが出てきています。こうした動きが既に生産体制 |
に大きな影響を及ぼしています。パンデミック以後、特に米・英両国において数多 |
く見られる現象として、”大離職(Great Resignation)”、”大退職(Great Ret |
-irement)”と今後大きな問題化することが懸念されているのです。日本でも、経 |
済が回復すればいずれ労働市場に戻って来るとの見方が大勢でしたが、パンデミッ |
クの3年目の2022年夏現在でも、未だ多くの労働者が労働の現場に戻っていません。 |
それどころか、既にパンデミックに伴う非労働人口の増加は、研究者の間でも議論 |
の的になっています。過去のスペイン風邪や黒死病のパンデミックの後のトレンド |
と必ずしも同じ動きをするとは限らないところに予想・予測の難しさ、対応の困難 |
さが潜んでいるようです。このパンデミックの後遺症的現象が今後どのくらい続く |
のかは、残念ながら目下決定的な決め手、理論、デザインやプログラムも示されて |
はいません。自信を持って応えられる根拠や材料をまだ誰も持ち合わせてはいない |
からなのです。可能性を踏まえて、後20年は続くだろうと解く専門家もいるくらい |
だからです。 |