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今年の干支(エト)は丑(ウシ)で、筆者には7度目の年男を迎えることになる。 |
この3月の誕生日で84歳の老人となる。若い時からの不摂生と鯨飲馬食が祟って数年 |
前から心房細動と狭心症に見舞われ、心臓の冠状動脈の内腔が極端に狭くなっている |
3ヶ所にステントを装着する手術を受けた。以来食餌療法もかなり慎重に続けて、今 |
日に至っている。塩分、カロリー、脂肪(特に動物性)、炭水化物の摂取に細心の注 |
意を払っている。お酒も適量ならという担当医の有難い言葉を信じて、夕食時に炭水 |
化物を一切摂らない代わりに、身体に良いと言われるフランス・ボルドー産の良質の |
赤ワインをいただいている。しかし、ボルドー地区だけでも数多くのシャトウー(日 |
本でいう酒蔵)があり、銘柄は数え切れないくらい多く、どの年のビンテージが良く |
て、どの年のものはお勧めでないなど判断する才も毛頭ないので、無難な策として、 |
大手のワイン・ディラーの推奨する毎年の金賞受賞銘柄を選別して、10本とか、1ダ |
ースとかのセットになったものを宅配便で取り寄せている。 |
昨年暮れに、いろいろカタログを眺めていると、今回話題にしようとしている限定 |
干支銘柄の「丑」をデザインしたチケットのボトルを見付けた。ディラーは東京都港 |
区六本木在のワインショップ・ソムリエ社(Wine Shop Sommelier)であった。ボト |
ルのチケットには”レ・ドーザニモ(Les 12 Animqaux)”、直訳すれば12種の動物、 |
即ち十二支という銘柄であった。宣伝文句には「2020年12月4日(金)発売、課税前 |
1,500円/本、限定干支チケットの今年の縁起担ぎのボルドー銘酒」となっていた。 |
当然、早速求めて賞味したのは言わずもがなである。 |
もう少しボトルそのものを説明してみよう。チケットに記載されているセパージュ |
(使われているブドウの木の種類とその組成比率)は、メルロー種75%、カベルネ・ |
ソーヴィニョン種15%、カベルネ・フラン種10%と表示され、ボトル正面には2枚の |
チケットが貼られている。1枚は大きなメインのチケットで、左側の茶褐色の絨毯用 |
の敷物の上に十二支のデザイン化されたものが4段組に表されている。最上段には子 |
(ネ)、丑(ウシ)、寅(トラ)、卯(ウ)が、2段目に辰(タツ)、巳(ミ)、午 |
(ウマ)、3段目に未(ヒツジ)、申(サル)、酉(トリ)、最下段の4段目に戌 |
(イヌ)、そして亥(イ)が金の縁取りの円の中にデザイン化されて描かれている。 |
それらの円の周辺には、後光のような金糸の縁取りがなされ、間あいだには州か市の |
マークと酒蔵のマーク様のものが交互に同じく金色で規則正しく並べられている。そ |
のチケットの右側には、上から金文字で”Vin de Bordeaux(ボルドーのワイン)”、 |
その下中央部に黒っぽい文字で銘柄である”Les 12 Animaux(十二支)”が大きくデ |
ザインされた丑が金色で描かれ、その下に金色文字で”VIGNORLES MOURGUE'S |
PROPRIZTAIRE"と登録商標の持ち主の名前が、その下に黒っぽい字で”Mis en |
Bouteille au Chateau”と、この酒蔵で瓶詰めにしたことが、一番下に金文字で |
”Produit de France(フランス製)”と記されている。そのチケットの下に細長い |
帯状のシールが貼られ、帯の中央部に受賞した三つの金メダルが配されていて、メダ |
ルの左側端には、英語で”Triple Gold Metal”と右側端には、フランス語で |
”Triple Medaile d’Or”と表示されている。 |
以上の話は、それ自体単な |
Les 12 Animaux(十二支) |
Triple Medaile d’Or(三つの金メダル) |
るニュースに過ぎないが、 |
フランスのボルドーのシャ |
トウーが中国の十二支のそ |
の年の動物をデザインして |
ワインを商品化するという |
行為が面白いと思い紹介し |
た。因みに話のタネに興味 |
のある向きにお見せできるようにと追加を依頼しようとしたが、残念ながら既に在庫 |
切れで追加入手は叶わなかった。たった数回喉を喜ばせて味も香りも覚えぬまま、こ |
の話はおしまいとなってしまった。 |
了 |
2021年3月4日(木) 記 |
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2.本を出した動機 |
私は10年位前から傘寿を迎えたら、今まで書いたものをまとめて一冊の本に |
しようかと漠然とした思いを持っていましたが、いろいろ欲がありすぎて整理 |
がつかず、いたずらに年月が過ぎていきました。ところが、前述の学会の機関 |
誌で、現在会長をされている酒井國光さんが書いた巻頭言に触発されて腹が決 |
まりました。 そこには、学会の創立20周年に向けてのキャンペーンについて |
構想が述べられ、その一つに会員がそれぞれ発表したものをまとめて学会の叢 |
書として発行することを勧める一文があったのです。因みに酒井さんは私と同 |
年の生まれで、山や団体を通じて古い交友があり、教員を職業とされた方で、 |
登山家として立派な方です(本の前文で祝辞を書いてもらっています)。 |
動機のひとつとして、学会の論集に掲載されても、会員の目にしか触れない |
ので、もっと多くの人に読んでもらいたいとの意図もありました。そしてこれ |
までに心がけてきた登山史とか、そこに関わってきた人々についての研究成果 |
が、この分野に興味を持つ後世の人々に役立つことがあれば、という気持ちが |
湧いたのです。 |
早速、酒井さんに打診したところ、最近DTP(卓上出版)のノウハウを取 |
得して、学会誌や自著で実績のある諏訪部さんという、学会で出版を担当して |
いる役員に相談するようにアドバイスされました。諏訪部さんとは以前から面 |
識もあり、早速全面的に協力してくれ、事態は急転直下に進捗したのです。 |
時あたかもコロナ禍の時勢下で在宅時間が多くなったことも逆に幸いし、昨年 |
夏ごろから原稿を揃え、挿入写真や図を集め、本格的には10月ごろから編集、 |
校正にかかって、12月初旬には発行することができました。 |
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3.本の内容について |
この本には登山史というジャンルの中でいろいろなタイプの、いわゆる登山 |
家たちが登場します。本の宣伝ではないので、内容の一例を紹介するに止めま |
す。最初に取り上げたのは輝かしい登山の記録を残し、登山思想に先見性を持 |
っていたのに、32歳という若さで病死した登山家について、その軌跡を追いま |
す。 |
彼は就職してから徴兵検査のときに肺結核を患っていることがわかり、八ヶ |
岳の麓にある療養所で加療することになりました。“事実は小説より奇なり” |
と言いますが、運命の日、ザイルで結ばれた盟友がこの療養所へ見舞いに来ま |
す。友人も肺結核を病んでいたのですが、そこに至る旅での無理がたたったの |
か喀血して急死し、その後を追うように当人も同じように息を引き取ったので |
した。あまりにも劇的な生涯について関心を持ったのを機に、3年以上の年月 |
を費やして彼の生き様を追いました。彼の縁者に会う機会もあり、情報交換を |
するようになりました。その過程で直筆の原稿や手紙、辞世の句も発見しまし |
た。 |
本としては全体として論考を基本としていますので、硬い文調になっていま |
すが、多くの文献を参考として引用していることと、考証的にまとめたことが |
特徴と言えるかもしれません。私は現役の頃、設計や品質保証を体験したせい |
か、物事を考察し、疑義があると検証しなければ済まない傾向があります。 |
確かにこれまで書いたもののアンソロジー的な本ですが、結果として一つの筋 |
書きが出来たと思っています。それが書名『山あれば人あり−登山史に躍動し |
た人びと』に表現されています。登山史というのは、事実の時系列的記述や年 |
表では語りきれない、そこに関わった人物が浮き彫りにされてこそ生きた歴史 |
になりうるということが私の信条で、そのことを表現できたと思います。 |
本書はもとより自費出版で、店頭に並べられるたぐいの本ではありません。 |
200部製本しましたが、半分くらいは図書館や博物館、資料館などの施設、 |
これまでお世話になった方や、自著を贈呈してくれた方へお礼として寄贈しま |
した。 |
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4.自費出版の喜び |
私はもともと機械技術者で、現役のころは会社でモノづくりの仕事に従事し |
てきた人間であり、当時は仕事柄エンジニアリングとかマネジメントの本を読 |
むことが多かったのですが、リタイアしてからは本命の山岳関係の本とともに、 |
元来好きだった歴史の本も封印を解いたように読むようになりました。 |
登山と歴史の感覚をドッキングしたものが登山史というジャンルだったと言え |
ます。登山史の研究と起稿は人文的な分野であり、私にとっては新しい分野で |
のライフワークとなりました。 |
A5判、巻末の資料(付表)35頁分を除けば、1頁2段1020字詰め250頁の |
本で、普通の本より字数を詰めています。写真も古いモノクロは中間に挿入し、 |
カラーは5頁分にまとめました。紙質が良いせいか、ズシリと重量感ある本に |
なりました。 |
出版後、学会の中にある分科会の会報などに紹介記事を載せてもらったので、 |
買い上げてくれる人も増えつつあります。雑誌『山と溪谷』3月号にも載りま |
した。 (社)日本山岳会の会報にも紹介記事が掲載される予定になっていま |
す。それ以上に私は、出版という自己表現ができたことで満足感に浸っていま |
す。 以上、宣伝めいた文章になってしまいましたが、最後に自費出版のおす |
すめについてです。 |
特に高齢期を迎えられた方、ご自分の生きた証として本を創ることをお勧めし |
ます。文を書くのが好きな方はもちろんですが、絵画、写真、俳句、短歌、詩、 |
それぞれ何かライフワークにされていることをまとめて、たとえ小冊子でも自 |
身の名前で一冊作ってみてはいかがですか? きっと達成感が得られ、人生の |
充実感が得られるに違いありません。 そして恩になった方とか、親しい方へ |
贈呈すれば、きっとあなたの生きていた道を祝福してくれること請け合いです。 |
図書館などへ寄贈すれば、多くの人の目に触れることにもなり、大事に保管 |
してくれることにもなります。 |
費用も今は新しいDTPのノウハウを身に着けた人に編集から出版までを委 |
託すれば、意外に速く廉価にできます。コロナで思うように旅行へ出かけられ |
ないのですから、何度か旅行へ行ったと思えば出版の費用は安いものです。 |
ご自身の人生の記念として自費出版をお勧めします。 |
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1.はじめに |
筆者はここ数年特別に計画書などは作らないが、幾つかの主題と目標と作家を選んで読む |
ようになった。また、毎日必ず読み進む習慣を続けるために、世界的に流行になっている一 |
日一頁決まった対象について知識を新たにし、あるいはあまり得意でなかった分野の知識を |
広めたり、毎日知らずに続けている習慣、しきたり、行事の内容、起源、裏に流れている思 |
想や理念を学び直し、常識の範囲を広げるために、読む本を決めている。一冊で一年間の内 |
容を包含する本であるから、分厚い読みでのある本であり、中味を理解して読み上げるには |
かなりの覚悟と心構えが必要である。あの世に行くだけの余生にある種の活を入れるための |
試練を課した試みとしている。 |
以下もう少し細かく記してみよう。 |
2.具体的な計画のあらまし |
(1) 一日一頁をある種の勉強として読む |
日本の365日を愛おしむ |
2018年にはディヴィッド・S・キダー、ノア・D・オッペンハ |
イム共著、小林朋則訳の「1日1ページ、読むだけで身につく |
世界の教養365」(文響社刊)を読み、2020年には本間美加子 |
著「日本の365日を愛おしむ」(東邦出版刊)を読んだ。後者 |
は元旦から大晦日までの日本の和暦の記念日や行事日について |
学び直し、関連する催事の意味と参加の仕方を教えて貰うもの |
で、大きな助言を得た。今年は読書界の指南役とも呼べる斎藤 |
孝監修の「Japan 1日1ページ読むだけで身につく日本の教 |
養365」(文響社刊、392頁)を選んだ。読み始めて既に4日になるが、忘れていること、今ま |
で思いもよらなかったことがあったり、自分の体験が更に分厚くなると言うか、内容が濃くな |
ったという思いを強く抱いた。 |
この本では月曜日から日曜日まで各曜日ごとに7分野を扱っている。即ち、 |
*月曜日は「自然」で、我々が住んでいる環境とその中で共に生活している動植物も含ん |
でいる。 |
*火曜日は「歴史」で、起源と今日までの歩みを扱っている。
|
*水曜日は「文学」で今迄の名作小説から詩・短歌・俳句に及んでいる。
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*木曜日には「科学・技術」で、古代の土木から近代のノーベル賞受賞技術までカバーし |
でいる。 |
*金曜日は」「芸術」で、絵画、彫刻、建築分野で世界に誇れる日本のものを紹介してい |
る。 |
*土曜日には「伝統・文化」で、今でも日常の習慣として行われていること、伝統的な習 |
慣を記している。 |
*日曜日は「哲学・思想」で、神道(神社)と仏教(寺)に根差している日本の神話から |
哲学までを扱っている。 |
(2)テーマを決めて選んだ作家の作品について集中しての読書 |
今迄に何回かこのホームページ上でも作家名や彼らの」作品を紹介したが、改めて整理し |
て、現在集中して読み進めている作家とその選択理由を説明し、既に近々読むつもりで座右 |
に備えている作品を紹介してみたい。 |
(a)ノーベル文学賞作家の作品
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最近は対象を専ら日本人で英国に帰化したカズオ・イシグロ、コロンビアのエンリケ・ガ |
ルシア・マルケスとカナダの随筆・短編の女王と呼ばれているアリス・マンローの3人に |
限っていたが、イシグロとマルケスは殆ど邦文訳も原書も読み終えたので、今年はより大 |
きくアリス・マンロー(Alice Munro)に集中しそうである。今年既に準備している作品は、 |
原書の”Selected Stories"(1997年 Vintage International 初版664頁)である。 |
(b)日本のエクソフォニストの作品 |
日本人で外国語を勉強し、外国に住んで、その国の言葉で作品を発表している須賀敦子、 |
多和田葉子ほかで須賀の作品も殆どを読み終えているので、彼女が巡った欧州諸国を足跡 |
を追って後日取材し纏めた作家大竹昭子の「須賀敦子の旅路ーーミラノ・ヴェネツィア・
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ローマ・そして東京ーー」(文春文庫、2018年3月10日第1刷、487頁)を出版された2018 |
年に実は一度読んでいたが、感慨も新たに再読してみようと準備している。 |
(c)いち早く新型コロナウイルスと現代文明を扱った評論 |
近代の虚妄--現代文明論序説 |
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佐伯啓思著、「近代の虚妄ーー現代文明論序説」(2020年 |
10月22日初版、東洋経済新報社刊、493頁) |
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(d)ポピュリズムと二極化の時代の今に評価すべき世界の食糧事情から、平和、人々の知能 |
まで、多くの領域での理念と実践が改善されたことを実証する書として米国で昨年のベス |
トセラーとなった話題の書 |
ハーバード大学心理学教授スティービン・ピンカー(Steven Pinker)著、橘明美、坂田雪 |
子共訳「21世紀の啓蒙ーー理性、科学、ヒューマニズム、進歩ーー(上)、(下) |
(Enlightenment Now: The Case for Reason, Science, Humanism, and Progress)」 |
(草思社、2019年12月20日第1刷、上巻464頁、下巻509頁) |
(e)日本の歴史的事実として語り伝えられている事象や事件を改めて科学の目を持って分析、
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評価してみようという面白い試みに挑戦した本 |
難題が続く船大工の末裔の播田安弘著「日本史サイエンスーー蒙古襲来、秀吉の大返し、 |
戦艦大和の謎に迫るーー」(講談社ブルーバックス、2020年9月20日第1刷243頁)。 |
(f)分野は多岐にわたっているが、全米で話題となっている本を数冊
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*凄腕の理論物理学者、プリンストン大学教授のポール・J・スタインハート |
(PaulJJ.Steinhaedt)があり得ない物質を追って同志と共にロシアのカムチャッカ半島を |
めぐる冒険を綴った「第二の不可能を追え!!」 |
(原題”The Second Kind of Impossible〜The Extraordinary Quest for a New Form of |
Matter")斉藤隆史訳みすず書房、2020年9月1日第1刷、365頁) |
*少しセンセーショナルで若干興味本位の息抜き用の読み物として、米国の有名な映画プロ |
デユーサーのハーヴェイ・ワインスタインの女優や女性従業員に重ねてきた性的暴行を暴 |
き、その実態を炙り出した2人のジャーナリストの話題の本「その名を暴けーー#Me Too |
に火をつけたジャーナリストたちの闘いーー(原題”She Said"), 2人のニューヨーク |
タイムス記者ジョディ・カンター(Jodi Kantor)、ミーガン・トゥーイー(Megan Twohey) |
著、古屋美登里訳、新潮社2020年7月30日初版408頁。世界の”Me Too"現象を喚起した |
書として有名で、特に報道関係者の必読の書となっている話題の本の由。 |
*全米の雑誌、新聞が絶賛した姉妹の絆を描いた警察小説として話題になった。
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邦題「果てしなき輝きの果てに(原題”Long Bright River")」、リズ・ムーア(Liz |
Moore)著、竹内要江訳、2020年5月25日初版、ハヤカワ・ポケット・ミステリー・ブック |
No.1955,484頁)。
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*全米で話題の犯罪小説から。 |
オーファンX 反逆の暗殺者 |
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既に映画化が決定しているグレッグ・ハーウイッツ(Gragg |
Hurwitz, ハーバード大学卒のベストセラー作家)著、三角和代 |
訳の「オーファンX 反逆の暗殺者(Orphan X)」角川文庫 |
平成28年9月25日初版、613頁)。 |
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*2020年海外ミステリー小説で最高の傑作と話題になり、出版契約金が200万ドル(約2億 |
円)のデヴュー作。ラーラ・プレスコット(Lara Prescott)−アメリカン大学で政治学を |
を学び、2018年にテキサス大学で美術学修士号を取った。2020年の米国エドガー賞最優秀 |
新人賞にノミネートされている)著、吉澤康子訳、「あの本は読まれているか(原題: |
The Secrets We Kept)」東京創元社刊、2020年4月24日初版、443頁)。 |
その原書Windmill Books, Penguin Random House, London, UK発行、456頁)も併せて読 |
むつもりである。 |
(g)終わりに息抜き用の軽い本を3冊 |
*中央公論が特別編集した「彼女たちの三島由紀夫」(2020年10月25日初版)。 |
彼女たちの三島由紀夫 |
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現在存命の女性作家、女優、訳者等も含めて有名人22氏と三島 |
との交友、座談、回想記等盛り沢山の内容があり、小説を離れ |
て、三島の私生活や裏面が思われて楽しみである。 |
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*2020年に在原業平の生涯を面白く表した「業平」という小説を発表した芥川賞を始め数 |
多くの文学賞を受け、2018年には文化功労者になった作家高樹のぶ子jの「業平」執筆 |
に当たっての取材ノートとも言える「在原業平 恋と誠」(日経プレミアシリーズ、2020 |
年10月23日 第1刷)。 |
*美術館のキュレーター(学芸員)上がりの作家原田マハにも熱中して20年以上にもなろ |
うか。彼女の作品の殆どを読んでいるが、作家がまだまだ今が最盛期であろうから、こ |
れからも数多くの秀作が生まれてくるものと期待している。最近文庫化された「アノニ |
ム」(角川文庫2020年7月25日初版)。実際の展覧会や美術・芸術界の動向の観察描写 |
に加えて作家の思い描くストーリーを展開するため旺盛な想像力との絡みがスケールの |
大きい物語となって大好きな読み物となっているようである。楽しみにしている作品で |
ある。 |
以上14冊もスタンバイの書が積み上がっていて、もうすっかりやることのなくなった今、 |
当面は身を持てあますことは無さそうである。しかし、問題はこれらが1月の何時まで持つ |
だろうかである。このような調子で進めたら、1年の読書量は400冊を超えてしまうであろう。 |
わが懐との相談も必要になろうが・・・・と、いらぬ心配に及んで余計な気をめぐらす日々 |
が繰り返されるのかもしれない。「どうでもいいではないか。騒げるうちに騒いだらよかろ |
う。お大事に!」という声が早くも周りから聞こえてくるようである。 |
了 |
2021年1月4日(月) 記 |
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2.「夢は何語で見る?」、「バイリンガルは二枚舌?」 |
筆者が海外営業の仕事をしているときに、会議の席上などで、メンバーの中に少し国粋主 |
義の人がいたりすると、「お前はどちらの味方なのだ!何で外人の言い分を良しとしたり、 |
賛同したりするのだ!」と面罵されたり、小声で嫌味を言 |
バイリンガル |
われることも屡だった。多分読者の中にも、例え雑談の席 |
であっても、これらの言葉を聞かれた方もおられるだろう。 |
「二か国語以上を喋ったり、理解する人は、嘘つきの要素 |
を持っていて、発言の何分の一かは少なくとも嘘が混座っ |
ていて、迂闊に信じ切って解釈してしまうと間違うぞ!! |
」などと真顔で当たってきた人も何人も知っている。 |
こうなると、ペテン師や詐欺師扱いと紙一重である。 |
筆者も従って甚だ不愉快な一方的な干渉の中にあっても、出来れば本当のエクソフォニスト |
になりたいものだと思っていた事もまた事実だった。 |
今にして思い返せば、未だ国際間の旅行の自由化も外国為替の自由化も始まっていない時 |
期に単身当時のソ連の港に上陸して陸路を半年欧州を遊学して以来、会社での生活の殆どを |
希望した海外との仕事に従事することが出来て、今日では足跡を残した国も150ヶ国を超え、 |
数多くの得難い経験を積み重ねてきた。ここまではその通りで全く不満も不足も感じていな |
いが、残念なのは現在までに一篇の論文も詩歌や文章も外国語では表せなかったことである。 |
全く情けない限りである。余生も短くなった今日、人生を終えようとしていろいろな終活 |
を進めていると、このことが常に頭に浮かび、一層残念に思われてならない。 |
この悔しさを拭い、挽回する最良の方法は果たして何があるであろうか。 |
是非見付けて挑戦してみたい。あまり四六時中このことばかり悔やんでいたからだろうか、 |
初夢でまた悔しさを再確認させられてしまった。無分別が原因なのか、まだ欲をかいて高望 |
みしているのか、本人は解からずにいる。年寄りの冷や水をお笑いあれ。 |
了 |
2021年1月3日(日) 記 |
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筆者には、上記のペンフィールド博士の指摘の中で一番分かり易い 2)についての体験を |
例示することができる。それは初めて欧州旅行に出た入社8年目の1968年に、この時の生涯 |
のメモリーとして身に着ける欧州を代表する逸品を何としても手に入れたいと思った。後日 |
人生の途中で、たとえ金銭に困っても、質草として差し入れてしまうようなことなど絶対に |
考えられないものとして何を選ぶのかを滞欧中ずっと考えていた。結論として筆者は何を選 |
択したと思われますか?ろくに貯金もなく、とても半年の欧州滞在を全額自費で賄うことな |
ど所詮できるはずもなく、結構な額の銀行借り入れをして出掛けたのではあったが、この品 |
選びは筆者にとっては全くの別問題であった。選んだものはローレックスの腕時計であった。 |
入手に際しては、丸一日の時間と手間と他人の手を煩わせてしまった。 |
日本を出る前に予め紹介を受けた日本人のスチュワーデス |
1968 Rolex Oyster Perpetual |
(当時はこう呼ばれていた)としてスイス航空に勤め、同航 |
空のパイロットと結婚されていた人の自宅を訪ね、一緒にロ |
ーレックスの本店を訪ねて免税で当時のお金で70万円の大枚 |
をはたいて手にした腕時計は、今も身に着けていて正しく働 |
いている。5年毎のオーバーホールを含め、結構な維持費が |
嵩むので、経済性を考えれば必ずしも良い選択とも言えない |
かも知れぬが、欧州初旅行の記念品として満足している。 |
オーバーホールに出す度に、店の人から「多分この時計が現在日本で実際身に着けられて |
いる時計としては最古のものではないかと思う」、と言われた。しかも、何回も「部品がも |
う入手不可能なので、オーバホールも今回が最後になります |
Worgl Hauptbahnhof(ヴィーグル中央駅) |
ね!」」と言われながら、何とか今まで無事で動いている。 |
同じような心境で手に入れたチロルで過ごした夏休みの際、 |
ヴィーグル(Worgl)の駅前通りの登山用品店で求めた同地 |
の手製の登山靴や冬のヘルシンキで買った二重になった大き |
な皮手袋など何品か同じような有難味を感じつつ今もなお身 |
の回りの大事な品として欠かすことのできぬ要を担っている |
品々がある。 |
若いころを思い出すとついつまらぬことを綴りたくなります。 御免ください。
|
了 |
2020年7月1日(水) 記 |
編集者注:(Worgl)の「o」は、上部に・・の付くオーウムラウト |
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筆者は幸せなことに、国内、海外どちらにもたくさん |
オランダ |
知人・友人を持つことができ、これらの人々の心遣いに |
支えられて実り多い人生を送ることができてきた。 |
非常に嬉しく思い、感謝に堪えぬ気持ちでいっぱいで |
ある。今後も温かい心遣いを大事にして、彼らとの良い |
関係を大切に保持できればと願うばかりである。 |
ちょうどこの文章を綴ろうとしていた2日ほど前に、 |
心遣いの典型的な実例になるであろう心温まる郵便小包 |
(コロナウイルス禍で航空便が利用できぬため船便で)がオランダの友人夫妻から届 |
いた。彼らとは数年前に日本を訪ねて来られたときにお会いし、筆者も家内と一緒に |
2泊3日の奥入瀬・十和田湖の紅葉狩りの旅を楽しんだのだった。 |
受け取った小包の中には彼らの心遣いを偲ばせる幾つもの事例が見られた。 |
コヒオドシ蝶 |
一つには、内包されていたカードのデザインに、世界 |
の蝶の収集を趣味にしている筆者を思って、欧州では平 |
地で見られるタテハ蝶科のコヒオドシのイラスト画がぼ |
んやりした実物の写真の上に浮かび出ているものを選ん |
でくれていたことである。 |
参考までに、日本ではコヒオドシは高原蝶の貴重な種で |
筆者も学生時代に北海道の知床半島の最高峰羅臼岳山頂 |
直下のお花畑でたくさん採集し、今でも標本箱一箱いっ |
ぱい持っている。現在は勿論採集禁止の対象蝶であり、自分の網に入れて楽しむことは |
できない。
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二つ目には、コロナウイルスのはびこる難しい時期に筆者の家族一同がどうしている |
かを尋ねてくれたカードのメッセージにも勇気づけのための文句が書かれていたことで |
ある。筆者は過去の欧州駐在時にかじった程度のオランダ語の知識では十分な理解がで |
きているとは思えないが、拙い英訳をすれば以下のようになるのであろうか。
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オランダ語の原文は、“Heel veel Sterkete in deze moeitijke tijd。” で、筆者 |
の英訳は”Quite great deal of power in this difficult time!“となった。もう少 |
し美麗な表現ができたかかもしれないとは思ったが、意を汲み取ることを第一義と考え |
ての所作であり、ご勘弁頂きたい。 |
Zoute drop |
三つ目には、駐在時に同伴した娘2人が当時はまだ幼 |
少で、現地で“Zoute drop”と呼ばれていた黒飴でヌガ |
ーのような、ゼリーのような柔らかいドロップが大好き |
になり、今でも当時を懐かしむときに第一に思い浮かん |
でいる品物らしいのだが、夫妻はそのことを憶えてくれ |
ていて、そのドロップをたくさんに送ってくれたのだっ |
た。 |
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以上のような些細な実例を取り上げて文章にまですることも大袈裟すぎるかもしれな |
いが、このように送り主は少なくとも幾つかについては気を遣っているのだから、受け |
取る側としても少し気遣いをして感じ取る努力が必要だということを言いたかっただけ |
である。他人との付き合いや文通が長続きするか否かの分かれ目は、案外このようなち |
ょっとした気遣いのあるなしや軽重に思いもよらぬ大きな力が作用していると思う。 |
「棺桶に片足を突っ込んでいながら、まだ余計なことを大袈裟に言うのだな阿保は!」 |
と笑われるかもしれないが、人間はそれぞれ生活の環境も違えば、経験も必ずしも同じ |
事が誰にでもできるとは限らないので、気付かぬまま終わってしまうことも多いのでは |
なかろうかと思い、敢えて一文に纏めてみた。 |
了 |
2020年6月18日(木) 記 |
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このαとβを目の座標で表すと次式になる。 |
α=2 atan(a/(√(y^2 + z^2))) |
β=atan((y+b)/z)- atan((y-b)/z) |
ただし、上式中のa,bは、図5に示すように、それぞれ碁盤の横寸法の1/2、縦寸法 |
の1/2である。ここで、目の位置により碁盤の形がどう見えるかを知る目的で、P点の |
座標(O,y,z)に於けるβのαに対する比即ち(β/α)を検討することにする。 |
図6(β/α)の等高線_本寸サイズの場合 |
図7(β/α)の等高線_正方形の場合 |
この(β/α)が1.00の座 |
標から見ると正方形に見え、 |
1.01から見ると縦が横より |
1%長く見え、0.98からだ |
と2%短く見えるはずであ |
る。そこで、(β/α)の値 |
が等しい座標を結んで(β/ |
α)の等高線を作った。 |
(*3) |
これを図6と図7に示す。図6は、「本寸サイズ」の場合を示し、図7は、縦横14寸 |
の正方形の場合を示している。 |
(脚 注)*3:等高線を得るのに使用した数値計算プログラムを参考までに付録に |
示す。 |
一方、対局者の目の位置を、日本人男子の平均座高等を参考にして図8で検討した。 |
その結果、目の座標がおおよそ(0,9,19)であることが判明した。これを図6、図7 |
にプロットしておいた。 |
図8 目の位置 |
さて、図6、7を見ると、図7の正方形の碁盤では、目 |
の位置が正方形に見えるz軸から大きくズレ、縦が横より |
7〜8%も縮んで見える位置に来ている。これに対し、 |
図6の「本寸サイズ」の碁盤では、目の位置と正方形に |
見える位置が見事に一致しており、「本寸サイズ」の素 |
晴らしさを示している。 |
実は、冒頭に取り上げた説に関し、筆者自身釈然とし |
ないものを感じていたのであるが、この定量的検討により始めて納得することが出来 |
た。また同時に、「本寸サイズ」の合理性をも初めて認識した。 |
図9 矩 差 |
昔の匠たちは。atan( )はおろか三角関数表などを使用 |
しなかったにもかかわらず、この見事な「本寸サイズ」 |
を発見している。これには、それなりに理由があるはず |
である。例えば『大工たちが、口にする三寸勾配の作る |
角がatan(3/10)そのものであり、彼らが常に持ち歩いて |
いた矩差(かねざし)でこのatan(3/10)を容易に作図(すみ |
だし)出来る(図9参照)』などがこの例であろう。 |
いずれにせよ、匠たちの英知とその細やかな心配りに思 |
いを馳せる今日この頃である。 |