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1.『拓本』とは |
『拓本』とは、木・石・器等に刻まれた文字・文様・図像等を必ず原刻面に紙を貼 |
り(上紙法)、その上から墨で摺り写す(上墨法)「間接的」な複写法、印刷法であ |
り、原刻面は汚れない。それに対し、版画は原版に墨を塗りその上に紙を置き原版に |
刻まれた文字・文様・図像等をパレンで摺り写す「直接的」な印刷法であり、原版は |
汚れると同時に反対に写る。魚拓にも直説法と間接法がある。 |
『中国』では文字で書いたものを大切にしたが、紙・絹・木等に書かれたものは時 |
代と共に風化摩滅する。そこで金属や石等の硬いものに刻んで保存するようになった。 |
これが「石経」で紀元前から存在した。紙が中国後漢時代(紀元25〜200年)に発明さ |
れ、石経から書写による誤字、誤伝を防ぐために、拓本技法が考え出され、拓本を基 |
に版木を彫り、版画にし、新碑を刻み拓本等の繰り返しが行われた。 |
現存する拓本の最古のものは唐拓といい敦煌の莫高窟第17窟から発見されたもの |
だが、それ以前からあったと考えられる。『日本』には遣唐使以降導入され、江戸時 |
代以降盛んに利用され、昭和20年以降、考古学の勃興にともなって遺物の文様や金 |
石文の記録法として採用された。『英国』にもラビング(Rubbing)という乾拓法があ |
り、中国の拓本技法が伝承された。固型墨(トールボール)や油絵具で摺る技法で、 |
その後東南アジアへと伝わった。 |
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@ 採拓の前に碑の清掃をする。陰刻の部分に虫の巣等があったり、碑の下の方が特 |
に汚れているので注意をすること。(タワシ、刷毛、タオル等で) |
A 碑面の大きさに合わせて用紙を切る。この時採拓面より少し大きく切る。 |
B 碑面に用紙を貼る。まず、用紙の上端左右をテープで止める。 |
C 用紙は水を含むと伸びるので、水貼りする前に用紙 |
 E文字の輪郭を出し(左)、Fタンポで上墨する(右) |
に軽く霧を吹き伸ばし左右のテープを貼り返す。 |
D 左手に噴霧器、右手に水刷毛を持って霧を用紙に吹 |
き付け、その上を刷き貼付けて行く。用紙の中央上部 |
から四方に向かって紙を伸ばしながら、しわを残さな |
い様に刷毛を斜めに使って貼って行く。 |
E 水貼りが出来たら巻タオルで紙の中央からころがし、 |
空気を抜きながら碑面に密着させると同時に文字の輪 |
部が浮き出る様に努める。さらに乾いたタオルで丹念 |
に文字を押し込んで行く。 |
 F墨付けが完了、はがすタイミングを待つ |
用紙の上にサラシ布(日本手拭でも可)を当て打刷 |
けで軽く打って文字・輪部を出す方法がある。タオル |
は新品よりも使いふるしたものが良い。後は、適当に |
乾燥するのを待つ。(6〜7割方乾いたら良いと思う) |
F 左右に打包(タンポ)を持ち、左手で墨をつけ右手 |
に移す。打包をそり擦り合わせたり、たたき合ったり |
して、右手打包にまんべんなく墨をつける。この打包 |
でなま乾きになった紙の上を碑面に直角にたたいてゆくと、文字や画、文様がくっ |
きりと紙面に現れて来る。紙のなま乾き具合と墨の量等は体験の中から見付けて行 |
く。打ち残しがないか、墨色のムラがないか、その結果を左、右、遠くから、また |
斜めからも確認する。 |
G 確認したら、用紙がもう少し乾く迄待ってとりはがす。この時破り易いので、紙 |
の一端を持つのでなく左右の上端を持ちゆっくりと上部から下部へ離して行く。片 |
腕を伸ばしてその上に紙の上部をたれかけさせて離して行くとよい。 |
取りはずす前に最初に貼ったテープを全部取り除くことが大事である。取りはず |
した採拓紙は平らな場所に新聞紙等を敷きその上に乗せて乾かす。九分通り乾いた |
らその新聞紙と一緒に丸めて納める。 |
H 採拓後は碑面はもちろん、周囲一帯も清掃する。 |