『山の花との出会い』 砂田 定夫
 
        夏から秋、そして冬へ  〜山へいざなう〜
 
地図を広げて、次の山行プランをあれこれ思い描く。
地図を広げて、次の山行プランをあれこれ思い描く。
 夏山シーズンが終わろうとしています。絢爛と高山植
物が咲き乱れるお花畑、岩と残雪の織り成す氷河地形の
名残り、湧き上がる雄大な夏雲、高空を流れる霧と風、
これらは夏山の風物詩です。開放的な夏の山は都会の喧
騒と暑さを逃れたい人々にとって天上の楽園です。
 やがて日本列島を支配していた太平洋高気圧が勢力を
弱めると、代わってやってくる大陸の移動性高気圧との
攻めぎあいが始まり、徐々に紺碧の空が広がるようにな
             り、早くも山には秋の気配が漂い始めます。木々の葉は
朝焼けの木曾駒ヶ岳稜線。朝焼けは天候悪化の前兆であった。
朝焼けの木曾駒ヶ岳稜線。朝焼けは天候悪化の前兆であった。
色づき始め、高原にはリンドウ、マツムシソウ、ヤナギ
ランなどの花が咲き、涼風がこころよく頬を撫でてゆき
ます。モミジ、ナナカマドなどは赤く、カラマツ、カン
バ、ブナなどの葉は黄金色になって、高山は早くも新雪
を装い短い色彩豊かな季節は最高潮に達します。
 やがて山には木枯らしが吹き始め、木々の葉は風に舞
い、落ち葉となってまた土に還ってゆきます。山は長く
厳しい冬の訪れを受け入れます。高山は美しくも厳しい
冬山の様相を呈しますが、低山では葉の落ちた明るい冬枯れの尾根に木漏れ日がやさ
しく降りそそぎます。
 山は四季を通じ、大自然が千変万化の事象を見せてくれます。山に親しむ心には季
節に応じた山歩きの方法を教えてくれます。山歩きにシーズンオフはありません。
 
        「歩くこと、山登りは賢者のスポーツなり」
 
 最近は登山者やハイカーの8割が中高年といわれます。 トキメック山岳部OBの仲間と、上信境の篭ノ登山へ登る。
トキメック山岳部OBの仲間と、上信境の篭ノ登山へ登る。
私の関連する幾つかの山のグループも皆中高年が主体で
す。勤めをリタイヤした人、子育ての一段落した人が、
新しい人生をエンジョイするための選択肢のひとつとし
て山を歩くことを目指すのです。
 動機はいろいろです。健康志向、自然観賞、仲間作り、
芸術趣味、ストレス解消等々。定年後は大いに山歩きを
お奨めします。私の知っている山好きのお医者さんは、
「歩くこと、山登りは賢者のスポーツなり」と多くの人
に山を勧めております。 都岳連トレッキングスクールで主任講師に。(木曾駒ヶ岳)
都岳連トレッキングスクールで主任講師に。(木曾駒ヶ岳)
 ただし、対象が大自然であり、厳しい面をもつ山岳地
である以上、謙虚な気持ちで山に接する必要があります。
登山者の事故の8割がまた中高年であり、経験不足・体
力不足・計画のずさん・装備不十分・知識の不足・思い
込みなどの原因があげられます。日常の健康管理と適度
なトレーニングを怠らず、経験の豊かなリーダーのもと、
安全で楽しい山歩きをすることが第一です。
 
 長い間、山歩きを続けてきた私自身、自分で楽しむ山 山の道具を手にすると想い出が甦り、時のたつのを忘れる。
山の道具を手にすると想い出が甦り、時のたつのを忘れる。
行以外に、最近はリーダー、インストラクターとして団
体を引率することが多くなりましたが、多くの人が汗を
かいて頂上に立ったとき達成感に喜び、その感動した顔
に接すると新鮮な気持ちが伝わって、とても嬉しく思う
ようになりました。長い間、山から享受した幸せを独り
占めすることなく、多くの人に分かちあうこと自体に喜
びと張り合いを感じるようになったのです。
 
 これからも機会あるごとに、四季の山の表情を紹介し、健康であれば誰でもが楽し
める山歩きの魅力をお伝えしていきたいと思います。興味のある方、山を志す方、何
でもご相談下さい。
 
            『山の花との出会い』
 
 山に登るときの楽しみのひとつに、花々との出会いがあります。辛い登りの途中で
ふと出会う小さな可憐な花、山稜に出たときに目の前に広がるお花畑、その時々に感
激があり、心を癒してくれます。ここに集めた写真はここ数年の登山で出会った山の
花を写したもので、それぞれに思い出があります。